オリンピック強化選手へのセッション

ロルファーは,アスリートに対してどのようにセッションを進めるのでしょうか?

今回は,オリンピックレベルの方に実際にセッションする機会がありましたので,どのような視点で行ったかをレポートします。個々に使う筋肉群や怪我などの状況は違いますが,その一例として参考になればと思います。

今回は10回SIシリーズはすでに別のところで終了した方です。

ボディ・アナリシスから,内転筋が働き過ぎているため,骨盤に捻れの動きが生まれ,関節としての恥骨結合に歪みがあって,骨盤底のサポートが薄い様子。表層の動きの滑らかさはあるものの,深部との連携が今一つという印象でした。

最終的なゴールとしては,パフォーマンス中の主要な脚の動きが大腰筋中心となるように,ムーブメント教育したいところですが,身体全体が休息できる状態をまず引き出す,これを今回のテーマと設定しました。

複数回のセッションの機会があれば別ですが,クライアントが遠方からということで,今回は1回限りのセッションで,内容を欲張らずにできることを心がけます。

本来,内転筋は,外側にある脚を内側に引き寄せる動作をすることが主な機能と考えられていますが,日常においてそのような動作は主要ではない。むしろ,動きを安定化する補助的な役割が大きいのです。

骨盤内の捻れによって,骨盤底筋群の適度な張力が失われると,その周辺の内臓機能にも影響が及びます。優先順位としては,まず,過度の緊張状態にある内転筋に適度な張力をもたらします。用いるタッチは,筋膜をリリースするような圧力は加えず,足場を提供するように支えながら,ピンとした張りが沈静化するのを待つ感じです。それと,内転筋が大腿骨に付着している場所は,内側側ではなく,むしろ大腿部の後ろ側であるということ。ここが一つのポイントになります。

ですから大腿部の後ろ側に楽な感覚が得られれば,仰向けで脚全体が重さを預け腰や背中も床と接地しやすくなり,休息の質が向上することが期待できます。

身体にどこかに回復しなければならない場所がある場合,一時的な可動域の広がりをもたらすようなワークよりむしろ,睡眠中あるいは活動していない時に,身体がどれだけ深く休息できか?が重要です。セッションが終わった後にも変化が途切れることなく,傷が癒えるような修復のプロセスも先に進むやすくなるに違いないからです。

細かく,振動が行き渡るようにふれた後,仰向けで踵や足裏全体が接地しやすくなるように促して,最後は,Tuning Boadに乗ってもらって,統合。

最初は,股関節側に負荷がかかる感覚があったが,そのがなくなり歩くのが楽になったとのことでした。写真で評価すると,腹部にも広がりが生まれ,中心軸がより身体の中を通っているように観察されました。腰の負担は減っているはずですが,ご本人も腰の違和感はなくなったとのことです。

次回もし機会があれば,腸腰筋からの繋がりを引き出すワークをしたいと思います。それが,骨盤内部への負担の軽減と怪我や違和感の予防にも役立つからです。

 

快復する道筋は一つじゃない

昨年夏から,肩が痛み出して,そのままにしておいたところ,夜中痛くて目が覚めるというレベルに達してしまいました。

これまで2回くらい40or50肩らしきものにはなったことがあり,だいたい3ヶ月くらい放置すれば自然に治ることを知っていたので,やり過ごしていたのですが,今回ばかりはそうもいかず,とうとうなんとかせねばと思った次第です。

夜間痛という一般名がある程,多くの人々が経験する肩の痛み。

最初は,信頼している鍼灸に5回ほど通ったものの平行線。ロルフィングで一度調整を試みるも今回は,確かな手応えを感じることができず,これは別の角度が必要という感じでした。 たまたま,数名の信頼できるサイキックあるいはヒーリング関係の方々からアドバイスをもらう機会がありました。大雑把にいうと

  1. 手相・数秘学のいい感じのMおじさん → 身体的というより,コミュニケーションに問題がある。
  2. サイキックで信頼できるYさん →  クライアントのある人とのあるやり取りが影響している。
  3. バリのシャーマンのIさん → 頭の使い過ぎと水の補給ができてない。

どの方も信頼できる方々ですし,アドバイスも思い当たる節は確かにあるものの,正に腑に落ちます!!という程の感覚ではなく,

それぞれの対処法も取り入れたものの,肩の痛みの改善には直接にはつながらない感じでした。

その時,私のロルフィングの先生であるジョン・マーティンの神経マニピュレーションのクラスをアシストする時期と重なっていて,クラスの合間に彼から1回セッションを受けることができ,何をやっても微かにしか変わらなかった肩が,4割くらい痛みが軽減しました。これはかなり画期的で,何しろ夜中に痛みに眠りを中断されないところまで改善したことは大きな前進となりました。

ただ,それでも痛いことは痛いので,右腕を使って圧力を加えるようなワークは一切できないので,3,4ヶ月は日頃よりさらに圧力をかけないロルフィングセッションになっていたと思います。それはそれで結果はでていたので,ますますワークに筋力的な圧力の必要はないと確認もできた,というメリットもありましたが,痛いことはまだ痛いわけです。

そのとき丁度,ある鍼灸施術を受ける機会があって,処方して頂いた漢方と鍼治療がさらに快復を進めてくれました。治療して頂いてから3ヶ月ほど経ちますが,腕をまだ完全に伸ばすことはできないものの,回復の右肩上がり(文字通り)勾配のままいけば,6ヶ月程で完治しそうで,誠に有り難いことです。

診て頂いた先生方の施術の腕は凄いというのはいうまでもないことですが,それを強調したいわけではなく,その時のタイミングで必要なことはそれぞれ異なっていて,どのアプローチが最適かはその都度変わるのだろうということです。そして,病気や症状自体は,何かの気づきをもたらしてくれたり,時には人との出会いのきっかけになることもあるという,”ゆるいもの”かもしれない,ということです。

(追記)

四十肩,五十肩を英語では,frozen shoulder=凍結肩と呼びますが,下の文献によると,その発症原因として,インフルエンザなどの予防接種が関係しているという結論が得られているようです。

この文献で著者は,ワクチン接種自体を否定しているわけではなく,接種の打ち方,深さや場所について適切であるべきといっていますが,ワクチン製造業や医産業界にとってはあまり広めたくない情報であることは間違いないでしょう。

J Chiropr Med. 2015 Dec; 14(4): 285–289.
Published online 2015 Nov 6. doi:  10.1016/j.jcm.2015.05.005
PMCID: PMC4688557

Onset of Frozen Shoulder Following Pneumococcal and Influenza Vaccinations

Zeina M. Saleh, MD,a, Sami Faruqui, MD,b and Abdullah Foad, MDc

ロルフィングとは? その答えの一つになりそうな体験記

説明に窮することの多いロルフィングですが,現在セッションを受けて頂いているクライアントの方から,興味深い感想を頂いています。

私はロルフィングという言葉は知っていたが、中身はよく知らないので勝手なイメージで ロルフィング=整体の一種・マッサージに属する方法の一つ と思っていた。なので施術1~2回では 肩こりが消えない等の面に重点を置いて考えていた。

しかし今回3回目を受けて、ロルフィングとは私の考えているような種類のものではなく全く別のものなのでは? と実感しはじめている。

今回感じた 中身が抜き取られるような不思議な感覚。時間が経ってきてその事が少し自分の中で整理されてきた気がする。

あの不思議な感覚は、身体中統一を失ってメチャクチャに詰め込まれていた細胞がきちんと升目を揃えるように あるべき順序で並べ替えられ、細胞ひとつひとつの形が整形された,という言葉で言い表すと ピッタリくる。

結果、身体全体・脳細胞の一つ一つまでが少しづつ整え始められ あるべき綺麗な整列・統一が行われ始めた感じ。だから車の運転で焦ることもなく普通の状態でいられたし、身体の内側から綺麗にしたい思いが表れてきたのだと今は感じています。
[別の回のセッションの後に ]
面白かったのは左半身で、施術を受けている内に 腕から肩にかけての筋肉というか 細胞が勝手に田畑さんに語り掛けだしたように感じた事。まるで筋肉というか細胞が私の意志と関係なく独立して田畑さんに話し始めたかのような錯覚を覚えた。

それは、筋肉・細胞が各自、私とは別個の筋肉格?細胞格?なるものを持って田畑さんに向かって、こんな風に私は固まっているだとか こんなに辛かったとかワイワイと話しかけているように感じで、すごく面白い感覚だった。

右半身は普通の感覚で静かに施術を身体が受けたという思いだけだった。

 

Rolfer’s note : 粘菌に見られる自律分散システムが,身体にも備わっているような気配を感じる感想です。

Somatic Experiencingセッション体験

10シリーズロルフィングが終了してから,トラウマの解放を希望されている方に,Somatic Experiencing(SE)のセッション,Movement,The Art of Yieldを用いながらセッションしています。dischargeと呼ばれるトラウマ解放のサインが観察され,心理的な働きかけではありませんが,自然に過去の記憶とつながる深い体験が伴ったようです。

◇セッション前の状態
 
・呼吸が吐ききれない。
・喉がつまったようで苦しい、痛い。
 何か嫌な記憶があるようなないような、思い出そうとすると、あと少しのところで霧がかかったように思い出せない。
・足の甲と、手の甲に田畑さんが触れてしばらくすると、首のつまりが軽くなり、なんだかほっとした。
 触れた箇所とは別の、意外な部位に変化が起こるのが不思議でおもしろい。
 ・いつものように、徐々に足裏がベッドに着いてゆき、
背中の接地面が広がって、今回は特に、腰・肩まで広がり気持ちが良かった。
セッション中の解放の反応 (discharge)
骨盤内の安心感を感じていると — 頭蓋骨と骨盤内が連動している感覚。すると,
→ 急に、頭頂から皮膚にビリビリと軽い電気的なしびれが起きた。
  頭皮と顔の皮膚が、じんじんして、子供の頃の慢性的な偏頭痛と寂しさを思い出した。
→ 片腕をななめ上前方へ、田畑さんにサポートしてもらいつつ押し出す動きを数回。
  ビリビリした感覚はそこにとどまっていたが、動きにより、振り払えるようなイメージで気分が少しスッキリ。

◇テーブルワーク後歩いてみると

霧が晴れるように、 頭の斜め上前に、空間があったのだ!と実感。
空間が私の近くにきた、突然空間ができた、という感じで気分が良くなった。

◇セッション後の1ヶ月間
 
・セッション後、のど–眉間 の連動を感じる。
 ・骨の内側の感覚が出てきた。
 ・精神的にハードな1ヶ月だったが、身体の感覚に注意を向ける時、以前より早く、集中できるようになった。
身体のサポートを感じる。
特に足の安定感(ただ立ちやすいとかではなくて、なんというか、余計な力を入れなくても地面に足が着いている)を感じられるようになった。
 
・心理カウンセリングの手法によって、のどの感覚を扱った訳ではなかったのに、結果的にのどの感覚と記憶に深く触れることができた。
のどの感覚は正体不明の苦しさではなくなったことは良かった。

セッションが手助けにならない時

セッションが,あまり効いてない感触があることがあります。その場合,セッションが機能していない原因がいくつか考えられます。

  1. 施術側のスキルが足りない    〜 ワークされるべきところが取り残されている場合。この場合は,扱うべきところが見落とされているので,施術側のスキルがネックになっています。
  2. 施術の種類が不適切   〜 1と重複する部分もありますが, 受け手が必要とする変化と施術者が提供する内容がかみ合っていない場合です。
  3. 受け手側の問題   〜 1と2はクリアされているにも関わらず,変化が頭打ちになっている場合。

1と2に関しては,施術者を変えたり,手法自体を見直すことで解決できます。ロルファーとして,スキルがネックになって変化が引き出せない場合は,トレーニングなどでそれを磨くことで克服できる部分も確かにあるのですが,一人で全部賄うことには無理がありますから,信頼できる別分野の施術者を紹介することも必要になってきます。

ただ,3に関してはあまり具体的な実感をこれまで感じてきませんでした。ところが先日この3に該当するのではないかという例に出会う機会がありました。

8年程前にRolfing10シリーズをこちらで終了された方で,その後しばらくぶりに調整のために数回おこしになっていました。確かに調整のセッション自体はうまくいっている感触はあるものの,次にいらした時には,同じようなパターンに戻っている感覚があって,それはご本人もうすうす感じていたところでした。次の予約を決める時に,

「田畑さんから見て,セッションが進んでいる感覚はありますか?」

と質問を受けました。そこで,上記の1と2がクリアになっているにも関わらず,何か進んでいないとすると,

「断定はできないものの,ご本人の生き方や方向性に修正が必要な場合があるかもしれない」

あくまで,施術者としての自分が本質的にワークすべきところを見落としていないという前提を強調した上で,そうお応えしました。

すると,何かが腑に落ちた様子で,Rolfing10シリーズを終了した後に,思い切って仕事を辞めたものの,現在また元の職場に戻っているとのこと。セッションを受けても,職場でのストレスをリセットするためだけで,状況が根本的には変わっていないことにお気づきになったのだと思います。その後,別の観点から自分を見直したいので,セッションを一時休止したいとのお申し出がありました。

ロルフィングのセッションは,囚われた状態から心身を自由にしていくためのプロセスなので,自分自身を望まないような状況に無理に押し込める生き方とは,方向性が異なることになります。このケースは,上記の3に該当する例といえるのではないかと思います。

だとすると,その方が何かを見直した後に,再びセッションにいらして,それによって何かが前に進む感触が得られた時に,この考察が正しかったのかどうか言えるかもしれません。

顧客の確保やビジネスという観点でいえば,クライアントはリピーターになってくれて固定客として確保できます。ストレスフルな毎日を送る人が,毎週駆け込み寺のように利用できる場所も必要でしょう。ただ,私はセッションをどう活用して欲しいかといえば,その場凌ぎをするためには使ってほしくない。 そこから一歩進むためのきっかけになるためならいいけれど,本人がうすうす何かに気がついているのに,ぬるま湯に居続けることを促すようなサポートはしたくない,と考えるわけです。

これまで,シリーズ終了後の調整セッションの料金は少し下げて設定していましたが,私自身がどのような方向性でワークしたいかということも考え,通常のセッションと料金を同じにすることにしました。このことも,先のクライアントの方が,セッションを続けるかどうかを見直すきっかけになったようです。

 

 

 

 

顎関節症と診断された方へのロルフィング

第7セッション後の感想を紹介します。

右腰に若干の違和感を感じながらのスタート。
今回のセッションは首・顔周辺。
まず右膝からスタート。いつも違和感を感じている箇所。
そこから親指にかけていつも通り電流のようなものを感じる。
右膝、右腰、左膝、左腰と進むなか、身体の感覚に集中するうちに、また夢を見ているような状態になる。
肩周辺に進む頃に覚醒する。
次は口の中から上顎の左側、右側、下顎の左側、右側にアプローチする。
上顎左側から始まった時、鼻と喉の奥に急に空間が広がり、呼吸が深くなったような気がした。
そのまま両鼻の穴へ進む。
セッション終了後、左顎に少し引っ張られるような違和感があり、右目が大きくなった気がした。
時間が経つにつれ、首の左側側面に軽い筋肉痛のようなだるさと、右膝内側から下にかけて、右の足の裏にも同じような感覚が出て来た。
その後首の後ろ側にも徐々にだるさが出た。
首の後ろのだるさは違和感は数日で無くなった。
その後、元々痛かった左あごから耳にかけてと、右側に少し違和感が出ることがあるが、以前のような継続的で耐えられないような痛みは出ていない。
顎関節症と診断された方へのロルフィングセッション

Rolfing session for the client diagnosed as TMJ syndrome.

Rolfing for TMJ

顎関節症と診断された方への第7セッション

Advanced 5 シリーズ終了された方からの感想

長年に渡って頭痛を患っていた方が,Advanced 5シリーズを終了され,感想をお寄せ頂きました。

別のところでBasic10シリーズを終えて身体のバランスが改善したものの,頭痛に関して相変わらずだったため,こちらのサイトで紹介している鉗子分娩で生まれた方への実施例を読んで,こちらでセッションすることに決めたそうです。頭痛が気にならなくなった後も継続してセッションを希望されましたが,その際に「自分が信用できない」とのことで,それに対する説明も兼ねた体験記となっています。

ご本人の許可を得てお送り頂いた感想を紹介させて頂きます。

長年の頭痛治療で、片頭痛・緊張型頭痛から頭痛薬による薬物乱用頭痛と診断され、頭痛薬の服用をやめたうえで、頭痛の予防薬(抗うつ薬・抗てんかん薬)と鎮痛薬での薬物治療を受けていました。

頭痛薬の服用を1年近く中止しても頭痛が続いていたこと、頭痛の名医と評判の医師からの暴言、また、医師を変えても結局は同様の薬での治療であったこと等から、通院を止め、なんとかしたいと思いながら毎日2~3回は頭痛薬をのむという生活を続けていました。

田畑さんのセッションを受けて初めて、薬なしに頭痛がないという経験をし、以後、頭痛があっても薬をのみたいとは思わなくなりました。画期的な変化で、このことも大変感謝いたしております。

しかし、また以前のように、痛いのだからどうしようもないと投げやりな気持ちになり、頭痛薬を使い始めるのではないかという不安もあり、継続をお願いいたしました。

以上「自分が信用できない」ことについての長い説明です。

さらに別件ですが、最後のセッションで不思議な体験をしました。

田畑さんが私の頭を持たれ、その手に頭を預けていた瞬間、自分が心地よい場所におり、頭をそっと優しく支えられて生まれてくるイメージが浮かぶと同時に、私はこのように生まれたかったのだと強く感じ泣きたくなりました。また、自分が向き合っていない、避けてきたということがわかった,とも思いました。何に向き合っていないのかは曖昧です。

泣きたい気持ちを抑えこんだように、抑え込んでいるということも感じました。

これは何かできすぎた話に思えて、当日はお伝えしなかったのですが、私にとって印象的な出来事でした。

シリーズが終わった後,医療機関と上記のようなやり取りがあったことを初めて知りました。診療前にセッションを利用してもらえる環境があるといいなあと思います。

お子さんが頭蓋早期癒合症と診断された場合

昨年から今年にかけて,頭蓋骨癒着症と診断されたお子さんを持つ親御さんから相談されることが,複数件ありました。

私は医師ではありませんので,診断に関わるような意見を述べることはできませんが,自分の子供がもし同じような診断を下された時にどのように考えたらよいのか,という観点で情報を集めてみました。

まずは,知り合いの医師に質問してみました。 →は医師から頂いた答えです。

クライアントの生後6ヶ月のお嬢さんが,K大病院にて,頭蓋早期癒合症で三角頭蓋と診断を受けて,脳の発達が影響を受けて将来自閉症になる可能性があるといわれ,早期に手術をほのめかされています。(お嬢さんは吸引分娩で生まれています。)
→ 私が療育センター時代(約20年前)に、この問題はすでに持ち上がっていて、小児センターの脳外科医で積極的にこの手術をおこなっていた先生がいました。その先生は、その後、より侵襲の少ない、後頭部頭蓋骨下部の骨切術を開発され、発達障害的な子どもさんに施術されていました。
→ その先生は患者思いの人気のある先生で、のちにTVにも取材され漫画の主人公にもなりました。
→ 当時、なぜ発達が促されるかについてその先生と話したことがあるのですが、おそらく頭蓋内圧の除圧による脳血流の増加が原因だ等と話していました。
→ 大抵の患者さんは小さいときに手術を受けるので、術前後の比較を目の当たりにする機会は、児童精神科の私の場合には少なかったのですが、私が見ていた発達障害の子どもたちの何人かは効果があったと母親から聞いています。
→ その当時も、手術に対する批判があり、沖縄の先生の三角頭の子どもの手術が問題になっていた記憶があります。その後、小児センターの先生は他院に移られ、私も療育センターを出てしまい、その手術のことはすっかり忘れていました。今の場所にきてからはそのような手術を受けられた子どもにあったことがありません。
→ 当時の知識しかないのですが、早期縫合閉鎖に伴い頭蓋骨内面に脳圧痕ができている場合には、手術の適応だと聞いた覚えがあります。頭蓋頭頂部の骨切りは範囲も広く傷もめだつため、その先生は避けるようになったと聞いたような気がします。
→ その後、舌短縮症による無呼吸症候群の子どもの舌手術で発達の遅れ(特に社会性)が改善するという舌癒着症手術に私は関わったことがあるのですが、その場合にも生まれてすぐからごく小さい時期に舌小体切除をおこないます。
→ この場合にも、脳の無呼吸時の酸素不足を改善することが効果の原因だとろうと考えられていますが、脳の基本骨格が出来上がる3歳までの脳の血流障害や低酸素状態は、脳の発達特に社会性に大きな影響を与えることが推測されます。
→ 現在、自閉症、統合失調症、認知症など様々な脳機能障害の原因としてデフォルトモードネットワークなどの脳内ネットワークの障害があることがわかり、それは、脳の白質にある神経線維の伝達障害だと考えられています。
→ ですから、頭蓋骨骨切り手術は、自閉症の根本的な治療なのではなく、発達障害全般の発達に影響する二次的原因の治療と考えてよいと思います。
→ 精神科医学会も自閉症協会も、自閉症の根本的治療と思われたら危険だとして警戒したのではないかと思われます。
→ あれから20年が過ぎ、これらの骨切り術がどのように広がったのか、収束したのか私にはわかりません。なので、その医師の経験や論文や評判を見て判断されるのが良いと思われます。
以上が,医師から直接もらった回答です。
(その他の情報として)

以下の団体から公式見解が発表されています。

日本児童青年精神医学会理事会として2005年時点での見解

http://child-adolesc.jp/proposal/2005-12-01/

社団法人 日本自閉症協会 の見解

http://www.autism.or.jp/topixdata/sankaku20040921.pdf

これらのことを踏まえて,以下私の考察です。

前頭部の縫合は,3~9ヶ月で融合するとされていますが,成人になってからも融合しない例もあって,かなりその時期についてはバラツキがあるようです。ということは,融合時期が,生体にとって極めて重要な影響を及ぼすとも考えにくいかとも思います。

冠状縫合や矢状縫合が完全に融合している場合は,確かにシビアに脳内の圧に影響すると考えられますが,前頭縫合は元々早めに融合して,他の縫合が主に関節として機能することを考えると,あくまで多様性の範囲に収まるのかもしれません。

それから,以下のように自閉症児の脳の過成長が子宮内で起こっている可能性を示すデータもあります。

http://www.afpbb.com/articles/-/2840126?pid=8064462

脳の発達を明確に示す基準が現時点で存在しないとなると,自閉症が起こる要因についても検討自体が,難しいと言えるのではないかと思います。

子を持つ親としては,最善を尽くしたいという気持ちで手術すべきか,保留にするか迷い,大変にお悩みになると思います。

上記の情報をお伝えした方の中には,診断を受けた後に,再度CTを取り直ししたところ,縫合が確認できたので,経過観察になった,というケースもありました。CTで撮影する際の体勢や状況によって,縫合の有無の判定が左右されることもあるようです。

手術するかどうかについては,困ったことに親にどうするか決断を迫られるようです。外科の先生だと手術する方向で勧められ,様々な負の可能性を提示されるので,その流れに任せてしまいがちになるのもよく理解できます。

でも決める前に,セカンドオピニオン,サードオピニオンを別の医師に求め,検査を入念に行ってもらった上で判断しても遅すぎることはないと思います。

その上で,大切なことは,最終的には,母親の身体感覚に基づく野生的な勘が頼りになると思います。

以上,参考になれば幸いです。

ロルフィングによる不思議な体験

今,セッションを開始された方から,以下のような感想を頂きましたので,ご本人の了解を得てご紹介させて頂きます。

1回目のセッション後なのですが、不思議なことに、昨日の晩に、マインドの中で、20年前に他界した母と、もう一度出会えた感じがして、小さい頃に経験した母との思い出を、急に思い出しました。思い出すことがありえないぐらい、忘れていたことでした。その直後、体が動き、背骨の歪みが取れたというか、骨に必要な空間ができた感じがしました。

 

側湾傾向のあるお子さんへのロルフィング

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睡眠中に痙攣発作が度々あって,てんかんと診断され薬を服用中のお子さんに対して,ロルフィング10シリーズを提供しました。
学校で側湾傾向があるという診断を受け,その改善を希望されておこしになりました。
ご家族の観察では,呼吸が以前に比べ深くなっているように見え,よく眠れるようになったようです。
また,期待はしていなかったものの,発作も程度が軽くなり質が変わり,頻度も減ってきたとのことでした。
それに加えて、いくつか興味深い変化があったことをご報告頂きました。以下,お母様からのメールを許可を頂いた上で,ご紹介させて頂きます。
娘はあまり感情を出さない、出せないタイプなのか、親である私達にもどこか遠慮しているようなところがあるのですが、最近は自分の気持ちを素直に話してくれることが多くなったように思うのです。
個性が出てきたとも思います。
 

それに伴い、この娘は大丈夫なのかなぁ、なんだか頼りないなぁとなんとなくいつも心配だった私の気持ちも、全然大丈夫だ、この子は、と思えるようになってきたのです。

田畑さんのセッションが終わったあとの帰り道、彼女は毎回、とりわけご機嫌でして、家に着くまで、ずーっと喋りっぱなしなのが、私はいつも楽しかったです。
10シリーズ後もよく眠れていて,お元気にされているようです。