道具がその仕事のクオリティに影響するなら、可能な限り一流の道具を揃えた方がいい。ボディワーカーなら、マッサージテーブルが最も大切な道具の一つである。
ロルファーの松永直之さんと共に、マッサージテーブルについて調査した結果をシェアしておきます。これからマッサージテーブルを購入する際の参考になればと思うからです。
はじめに
マッサージテーブルは個人セッションやトレーニングの質にも関わってくる。単に安価であるという理由ではなく、クオリティの高い良質のテーブルを導入することには意味がある。
背景
数社存在したマッサージテーブル製造会社が、2006年頃から、中国に委託して安価で材料費等のコストを下げた製品が出回るようになった。日本で広く販売されていたアースライトが、Harmonyを出したブランド維持のために子会社として設立したインナーストレングス社が立ちあがった辺りの時期から、各社とも中国に委託するOEM生産の流れが加速した。価格競争が激化し、粗悪なものも出回るようになり、その結果、OEM生産されたアースライト社のテーブルのレザーがボロボロ(※3)になって張り替えが必要になるケースが多発しているという。
模倣から自社ブランドを立ち上げる会社も乱立したが、こうした時代の流れによって、いいモノを職人が丁寧につくるクラフトマンシップに基づいた会社として、最終的に米国のオークワークス(※4)とカナダのノマド社が残っている。
ノマド社のマッサージテーブル
カナダのノマド社の全てのマッサージベッドは、世界一厳しい外部検査機関である北米のULによる製品安全認証を受けている。また、フレーム(木製の躯体、脚)は、一生涯保証。TMC(ラベンダーヒル)は、14年間代理店としてノマド社の製品を扱っており、尚かつメーカーに関わらずマッサージテーブルのレザー張り替えや修理業務を行っており、どのメーカーのどの部位がどう壊れ易いのかを総合的にみており、他のブランドも扱っているものの最終的にノマド社の製品一番お勧めできるという結論に達しているとのこと。TMCは、レザーのジャングルテストと呼ばれる耐久試験等のデータも把握している。
購入に際して
2005年より前に作られたアースライト社のテーブルと、現在ブランド名は同じでOEM生産されたテーブルとでは、全くクオリティが異なる別ものとなっている。実際にOEMで生産されたと思われる安価なタイプのマッサージテーブルは、経年劣化によりレザーはボロボロになり、使用開始3年目には台の中央部分が凹むようになったという(※5)。
ノマド社のマッサージテーブルは、レザーをウルトラレザー(※6)という素材にすれば、優に30年は持つとのこと。わずか数年で質が低下するような安価なテーブルを購入してその都度買い直すというやり方もあれば、生涯保証がついていて、日本での修理も可能な質の高いテーブルを長く大切に使っていこうとする考え方もある。
材料やコストをケチらず、いいモノを地道に作って行こうとする職人魂を応援するのか? 或いは、無難な価格設定で、模倣を恥ともせず価格競争優先の会社を応援するのか?
それは各プラクティショナーの道具に対する考え方や何を大切にするのか?という姿勢と方向性(※7)にも反映することだと思う。
最近、新疆ウイグル地区での強制労働が問題視されるようになったが、単に安価という理由で購入した行為が、実はジェノサイド認定された非人道国家に利益をもたらし、それらの残虐行為を容認し、結果的に応援することになってしまう。
もちろん、OEM製品のすべてがそういった経緯で作られたわけではないと思うが、安すぎることには、理由があるということを認識すべきである。
【参考】
ノマド社の代理店ラベンダーヒルTMCから貴重なお話を伺うことができました。TMCは、社長自ら各本社/工場へ直接出向いて視察交渉を行う徹底ぶりで、ご自身のモノづくりへの姿勢やこだわりが強い。考え方はもとより小さい会社ならではのフットワークの軽さ柔軟さがある。
※3:レザーがボロボロ
| 長所 | 短所 | 備考 |
ポリウレタン(PU) | 柔軟性 | 加水分解 | 現在主流。メーカーによる耐久性の違いが大きい。日本の高温多湿条件に適しているのは日本製生地。 |
塩化ビニル(PVC) | 耐久性 | 有害問題 | 現在はほとんど使われない. |
※4:オークワークス
日本代理店はラ・クラーテジャパンとGoodlifeアソシエーションが主だっている。前者は10万円台後半から電動の高額商品をspaやリゾートなど大手への提供メイン。後者は小~中規模経営、商品は13万からのみ。
※5:各社比較
メーカー | MASTER(協会所有) | EarthLite他 | NOMAD |
商品例 | BERMUDA | SPIRIT | SUMO |
直接価格 | $280 (¥2.9万) | $439 (¥4.6万) | $399(¥4.2万) |
日本価格 | 変わらず | ¥7.0~10万(ベース) | 7.0万(ベース) |
製造元 | 中国 | 中国メインにシフト | カナダ |
生産 | 大量生産 | 大量生産 | 受注生産 |
◎
| 低価格 ネット通販によりほぼ現地価格で購入できる | 長年のブランド名 代理店通し修理依頼はできる 品質中~高 | 耐久性 代理店通し修理依頼しやすい 生涯補償 丁寧なモノづくり 品質高い カスタム可 |
×
| 品質低い~並み 耐久性低い 修理は行わない (使い捨て前提) | 耐久性下がった。 不良率3-5% | 小ロットのため輸送費等の中間マージンがかかる |
※6:NOMAD製品のレザー展開
レザー名称 | メーカー | 価格 | 備考 |
スタンダード | - | ¥0 | ベース生地 |
レガート | 東京シンコーレザー | +¥5000 | 日本TMCだけの別注品 耐久性↑、低価格に抑えた |
ウルトラレザー | ウルトラファブリクス(US) 第一化成 | +¥27000 | NOMAD標準オプション 柔軟性↑耐久性↑ 逆輸入でコスト高 |
※7:姿勢や方向性について
近年様々な分野で取り組み始めているSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」に、「12.つくる責任・つかう責任(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)」という項目がある。
※8:テーパー脚の採用
従来、脚部はベッド面に対し垂直に位置する。ベッド短軸端面への荷重時にテコの原理が働き、反動で中央関節部にてポップアップしやすい。※トレーニング時に手を挟む事例あり。これを防ぐため、ベッド面に対し外向きに角度をつけ取り付けるオプションを採用できる。ノマド独自の機能。
田畑としては、新しくマッサージテーブルを次購入する際には、TMC経由でノマド社の製品を買うつもりです。