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松果体から観る

Rolfing (ロルフィング)の継続教育としてのロルフムーブメント認定トレーニングでは、クライアントをどう観るか? seeingについて扱うことがる。どう観るか?は、どこにどのように働きかけるか、と同様かそれ以上に重要です。

周辺視野と集中視野については論じられることがありますが、どちらかを行ったり来たりする見方だと安定しません。どちらかというと周辺視野を使いなさい、という結論になりがちなのだけれども、よくその部位を集中して観るためには、集中視野も必要です。

そのどちらでもなくて、どちらでもある観方が、松果体から観るという感覚です。松果体は、サーカディアンリズムにも深く関わっていて、それ自体に光受容のレセプターがあることが知られています。脳のほぼ中心部に位置しているため、実際の外部光を検知していると考えるのには無理があります。ですが、最近、生体から微弱な光が発せらているということが分かってきており、バイオフォトンの存在が報告されています。

クレニオのバイオダイナミクスの教師でもある恩師Carol Agneessens先生が、脳脊髄液が光を運ぶということを仰っていました。以上のようなことから、松果体は直接外部の光に反応しているというより、間接的に脳脊髄液や周辺の細胞などを介して、光を受け取っている可能性が予想されます。

実際のセッションで松果体にフォーカスしたケースでは、セッション後3日、就寝してから眠りにつくまでのまどろむ時間がなく、急に電源が落ちたように眠る経験をした方がいました。ということは、ワークによって何らかの影響が松果体に及んだかも?!しれないと感じさせるわけです。松果体は睡眠に大切なメラトニン産生に関わっているからです。

骨の強度と骨密度を維持するために

骨への適度な物理刺激が組織液の流動性を高め、炎症に関わるタンパクNF-κBの活性を抑制して、骨の強度・密度を維持するメカニズムが解明されたそうです。

間質液の流動によって細胞が力学刺激受けることが、運動によって促されるためには、組織液が滞りなく円滑に流れるルートが整備されていないといけません。

ということは、身体全体の運動も大切ですが、それに加えて、強度や骨密度が落ちている骨の周辺の組織液の通りを改善できれば、骨組織の正常化の手助けができる可能性があるということになります。

骨に関しては、Sharon wheelerというロルファーのBone workが知られていますが、その圧力をかなり使うアプローチではなく、振動を使いつつ骨膜からも働きかける手法をとっています。

予備)食品としては、トレハロースが、閉経後骨密度が減少する骨粗鬆症のモデルとなる卵巣摘出マウスにおいて、骨密度を上げることが示されています。

https://research-er.jp/articles/view/82521

心の問題と重力

ロルフ博士の残した言葉:

“… no situation exists in a human which a psychologist would diagnose as a feeling of insecurity or inadequacy unless it is accompanied by a physical situation which bears witness to the fact that the gravitational support is inadequate.”

もし、重力のサポートが十分に得られていないという肉体的な状況がなければ、精神分析医が、不安感や無力感と診断する人間は存在しない。

さらに意訳すると、

精神分析的診断としての、不安感や無力感は、必ずといっていいほど、重力のサポートが適切に得られていないことに起因している。

つまり、身体が重力のサポートを得られるようになりさえすれば、精神的な問題の多くは解決する可能性を示した言葉です。

Somatic Experiencingなどによって、蓄積したトラウマのエネルギーを解放したとしても、元々の身体が重力のサポートが得られる身体状況でないとすれば、元の身体という土壌が変わっていないので、手放したものを別の形で引き寄せてしまうかもしれないし、いずれにしても、重力波が身体をうまく通り抜けないのであれば、エネルギーが滞りやすいということには変わりないわけです。

私自身が、ロルフィングをセッションの中心に位置付けるのは、ロルフィングのプロセスには、重力のサポートが得られるような身体に再構築する力があるからです。

セッションで得た体験を仕事に活かす

ヨーロッパ留学後、日本で就職され、人事を担当されているクライアントの方が、身体状況の改善に伴って、セッションが思いのほか役立っているという。

会社で何かと頼られ寄りかかられることが多いが、そんな時にもそのことが負担にならず、あまり気にならなくなったという。さらに、相談に乗るときにも、こちらでのセッションのように最小限のちょっとの介入を心がけていたら、それで仕事がうまく円滑に回るようになっているという。

医師の方が少し前にセッションを終えたが、自分の診察に対する構えがとても変わった仰っていた。

患者に対して、どこまで介入して、どこまでで止めるかは、セオリー化、公式化できない。介入し過ぎれば、受け手の主体性や自力・底力を奪ってしまうことになるし、必要なことが足りなければ、自然治癒の流れに乗ってもらうお膳立てにならない。患者をつぶさに観察する力が求められる。この方は留学経験もあるため、真面目に医療に取り組もうとすればするほど、日本の旧態依然たる管理社会に馴染めず悩んでいらっしゃる様子だったが、身体の解放と共に、患者との間合いの取り方や、介入のタイミングについてとてもセッションの体験が参考になったと感動されていた。

トレーニング形式やワークショップでなくとも、個人セッションの体験を通して、実際の仕事にそれを応用、活用して頂けるのはとてもうれしい。

ロルフィングを体験して、それまでの生活や人間関係、仕事をリセットするケースもある。時にはそのような大変革も必要だが、それまでの自分や状況と向き合うことなく、準備もなく、投げ出すように止めてしまうのは、「統合」ではなく逃亡である。

実生活に活かしてこそのロルフィング体験であってほしい。