オリンピック強化選手へのセッション

ロルファーは,アスリートに対してどのようにセッションを進めるのでしょうか?

今回は,オリンピックレベルの方に実際にセッションする機会がありましたので,どのような視点で行ったかをレポートします。個々に使う筋肉群や怪我などの状況は違いますが,その一例として参考になればと思います。

今回は10回SIシリーズはすでに別のところで終了した方です。

ボディ・アナリシスから,内転筋が働き過ぎているため,骨盤に捻れの動きが生まれ,関節としての恥骨結合に歪みがあって,骨盤底のサポートが薄い様子。表層の動きの滑らかさはあるものの,深部との連携が今一つという印象でした。

最終的なゴールとしては,パフォーマンス中の主要な脚の動きが大腰筋中心となるように,ムーブメント教育したいところですが,身体全体が休息できる状態をまず引き出す,これを今回のテーマと設定しました。

複数回のセッションの機会があれば別ですが,クライアントが遠方からということで,今回は1回限りのセッションで,内容を欲張らずにできることを心がけます。

本来,内転筋は,外側にある脚を内側に引き寄せる動作をすることが主な機能と考えられていますが,日常においてそのような動作は主要ではない。むしろ,動きを安定化する補助的な役割が大きいのです。

骨盤内の捻れによって,骨盤底筋群の適度な張力が失われると,その周辺の内臓機能にも影響が及びます。優先順位としては,まず,過度の緊張状態にある内転筋に適度な張力をもたらします。用いるタッチは,筋膜をリリースするような圧力は加えず,足場を提供するように支えながら,ピンとした張りが沈静化するのを待つ感じです。それと,内転筋が大腿骨に付着している場所は,内側側ではなく,むしろ大腿部の後ろ側であるということ。ここが一つのポイントになります。

ですから大腿部の後ろ側に楽な感覚が得られれば,仰向けで脚全体が重さを預け腰や背中も床と接地しやすくなり,休息の質が向上することが期待できます。

身体にどこかに回復しなければならない場所がある場合,一時的な可動域の広がりをもたらすようなワークよりむしろ,睡眠中あるいは活動していない時に,身体がどれだけ深く休息できか?が重要です。セッションが終わった後にも変化が途切れることなく,傷が癒えるような修復のプロセスも先に進むやすくなるに違いないからです。

細かく,振動が行き渡るようにふれた後,仰向けで踵や足裏全体が接地しやすくなるように促して,最後は,Tuning Boadに乗ってもらって,統合。

最初は,股関節側に負荷がかかる感覚があったが,そのがなくなり歩くのが楽になったとのことでした。写真で評価すると,腹部にも広がりが生まれ,中心軸がより身体の中を通っているように観察されました。腰の負担は減っているはずですが,ご本人も腰の違和感はなくなったとのことです。

次回もし機会があれば,腸腰筋からの繋がりを引き出すワークをしたいと思います。それが,骨盤内部への負担の軽減と怪我や違和感の予防にも役立つからです。