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rolfinger について

米国Rolf Institute認定ロルファー&ロルフムーブメントプラクティショナー。

苦手克服に意味はあるのか?

最近よく考えるのは,苦手克服って必要ないんじゃないのかということ。

一芸に秀でたり,一つのことしかできない人に対して,あれもこれも周りは要求しすぎなのではないのかと思う。人間らしさとか自分という存在を理解するためには,

好きなことをする,というより,自分がしないといられないことをする。

やろうと思えばできるけど,気が乗らないのだったらしない選択を考える。

苦手なことは他人は得意で任せた方がいい場合がある。

余裕があっても,嫌なことや苦手な人と過ごすことで埋めない。

 

時間が無限にあるわけではないことを考えると,わざわざ抵抗のある方に向かう必要はないんじゃないかと思う。そこに何か目的や体験してみたいという興味があれば話は別だが。そうしないと,本当はオレって何がしたいのか? やりたいことをやっているときの充実感から遠ざかったしまい,わけがわからなくなってしまうような気がする。

そうしたことに無自覚だと,自分の本来使いたいセンサーの感度が鈍ってしまい,結果運気が下がるような状況を引き寄せてしまうのではないだろうか? 思考を停止させることなく,人間らしく自分らしく生きるには?ってなことを考えると,巷でいうような上昇志向とか苦手克服という言葉に惑わされないように用心する必要があるように思う。

そんなことを考えています。

一般に発達障害と診断される人々は,それ以外の人間ができることができないことをクローズアップしがちだが,それをそのままにしておくことを許さないことが多い。少なからず人間はデコボコしているわけだから,大きな支障がない限り,無理に克服しなくていいのではないか。上昇志向も問題だ。その状況を味わうことなく,常に何かを漁っているギラギラした前のめりの姿勢,そんな人が近くにいると落ち着かない。もっときっとその状態を味わった方がいいこともある。

そんな風に感じています。

コラボレーション

先月末は,ヒモトレの小関勲トレーナー,古武術の甲野善紀先生と鼎談,その2日後は身がまま整体の片山洋次郎先生とのワークショップと立て続けに大きなイベントが続いた。

私がコラボして楽しいのは,上記の方々のような,決められたことを決まったように行う枠にはまったものではなく,その場に応じて新鮮さを失わず,臨機応変に対応してもらえる方々との組合せである。

それ以外の組合せには興味がない。というか時間の無駄なのだ。ロルフィングの教員でも恩師のキャロル先生ほど自由にやらせてくれる懐の広さを持つ教員は珍しい。

そんなことを考えている中で,今年のコラボはよかったとしみじみ思う。

それと,協会主催の私が講師をしたワークショップも,いい人材が集まってくれて有意義な学びの場を共有できた。この先いつまでもいい状態でワークショップができる保証はないし,相手の方がどんな事情で一緒にできなくなるかわからない。

実際に,10月に予定されていたハンナソマティックスのワークショップが講師の体調不良が原因でキャンセルになったことを目の当たりにして,クラスが無事開催され成功のうちに終わるということは,いろんな要因が不備なく揃う必要があって,ある意味運がなければ成り立たない。

どのイベントも,日々のプラクティスにいいフィードバックをもたらす意味のあるもの揃いだったと思う。

ありがたいことです。

統合セッション(8-10)の理解を深める

ロルフィング10シリーズの8,9,10回目では,統合を扱います。

統合とは何ぞや?という問いかけに対しての答えは,言葉での説明には限界があって,こういう”感じ”としか伝えられないところがあります。

昨日までの4日間のロルフ・ムーブメント認定クラス〜SI10シリーズのイールドワークへの翻訳では,まさにこのテーマに取り組みました。

同テーマでこれまで,5回クラスを行ってきましたが,今回突然閃いたこと。それは,つながりをつくる主体は,受け手であって,それをプラクティショナーはコントロールできない,こと。できるとすれば,つながりが引き出されるような,条件や場を提供することだけであること。それを踏まえた上で,講義したり実習するととても楽で居ることができました。

今回のクラスで興味深かったのは,最終日の10セッション目としての生徒さん同士の交換セッションが,施術者の介在度合いが最も少なかったにも関わらず,もっとも変化した印象が強かったことです。

私のワークショップでの最も大切にしていることは,最終日に参加生全員の心身のバランスが整って,統合された状態で終えることです。

クラスの内容が情報として優れていることと,実習の成果がそれに比例していなければ,意味がない。ボディワーカーは身体が資本ですから。

 

 

 

ワークの質を上げるために

いくつかの体験と仮定を元にイールドアプローチや間合いのワークを発展させ,実践してきました。

◎施術は相互の作用〜対人のみならず空間の中での関係性・共鳴から成り立つ。つまり,一方向の反応ではない。

・施術者は,出来るだけ力みのない状態が望ましい。

・施術者の力みが抜けた時に,それに受け手は呼応する。

◎触れている時より手を離してから反応が進むことがある。

・触れ過ぎ,間を詰めすぎが,受け手の反応を抑制する。

◎施術者がいいと思っていることを押しつけない。

・オプションとなる提案はできるが,絶対的に正しいことはない。

・受け手が望んでいない余計な反発的な反応が起こり,時に害となる。

・施術者は,受け手の身体が望む働きかけと同期する必要がある。

◎受け手の身体が,”安全”を感じている時に,入力を受け容れ可能。

・深く安全を感じている時に,自ずと統合への変化を開始する。

◎セッションで目指していない余計なことをしない

・施術者は,隠れて支配的な意念や霊的なことをやり取りしない。

・変化の結果よりその過程で気づくことに意味があるとすると,違和感が減ることが,すべてのケースでいいこととは限らないかもしれない。

◎受け手の存在とその状況は尊重されるべきである。

◎定着する,意味のある変化は,時間をかけゆっくり進む。

・ゆっくり進む,いい変化は,変わったことすら気づきにくい。なぜなら,定着して馴染んでいく変化はちょっとずつ進むから。

・逆にわかりやすい変化は,それが定着するのか観察が必要。

◎施術者はあらゆる変化にオープンである必要がある。

・働きかけによって,受け手がどう変化するかどうかはわからないという前提が必要。こう入力したらこうなるというのはこじつけであることが多い。むしろ,施術者側の知覚が狭いことで,様々な可能性が狭められるリスクがある。

・起きたことの説明や解釈は断定的であってはいけない。断定はできないが,施術者の感覚としてはこういうことかもしれないというスタンスでのコメントはできる。

 

以上のようなことを考えてきたので,一方的に受け手に強引に変化させるようなワークとは別の方向性を探ってきました。

このワークの種類に関わらず,施術の「強引さ」は一番避けたいことです。自分の流儀のみならず,私自身が他者からワークを受けるときに優先的に考えることです。逆にいえば,強く圧を加える技法を用いていても,こちらのシステムを思い込みではなく,しっかり読み取った上での施術であれば,身体はすんなりその入力を受けとるはずです。

上のことが保たれているとき,施術者側と受け手側相互に健全さが保たれるはずです。

 

 

 

Rolf Instituteの教員会議での発表

9月中旬にボールダーにあるロルフ・インスティテュートで開かれた教員会議に出席してきました。

私がロルフィングトレーニングを受けた旧校舎。

パールストリート沿いにあって,裏の公園にも隣接していた校舎のロケーションは最高でした。現校舎のある場所は,ダウンタウンからも遠く,車なしではアクセスできず,馴染めません。

旧校舎裏のレッドロック

トレーニング中何度も昇った岩。

Rolf Institute最初の校舎

ここで学んだことはありませんが,ロルフ博士が教鞭をとった場所としても有名です。

ムーブメント教員仲間

一番左のノルウェー人でサンタクルーズ在住のペレとも仲良くなりました。左から3番目は,私のUnit1の講師もしてくれたスーザン。ムーブメント仲間ならではの,親密感もあります。

会議も終わってやれやれの表情。教員のみの集合写真です。

やれやれでした。

デモンストレーション中。

これはエキサイティングな体験でした。一切触れないワークの紹介。多分,インスティテュート歴史上稀なプレゼンだったと思います。

詳しくは,雑誌ソトコトで紹介します。

 

施術者自らが健全さを保ちつつ,セッションを深めていくために

技法の種類に関わらず,施術の質やスキルが向上してくると,より受け手と深いレベルでつながり,様々な効果や改善といった結果が伴ってきます。

しかしながら,施術内容が深く精妙になってくるにしたがって,受け手から悪影響を受けやすくなって,過度に疲労を感じたり,健康を害した経験のある援助職の方は少なくないはずです。

では,施術者が,自らの健全さを保ちつつ,施術をより深め結果を出して行くにはどうしたらよいのでしょうか?

受け手との間合い,施術者のプレゼンスの向上や知覚状態が大きな鍵になります。

 

 

離れたところから見守ることによる身体構造への影響

最近の場の探求〜自分の間合いを見つけるワークショップが面白い。

初参加でソマティックな働きかけに全くの素人の方でも,しっかり反応して変化が引き出される。ワークショップを通じて,より空間を観て感じる眼が養われてくるようだ。使えば使うほど,感覚は強化され,確かなものへと変わってくる。面白い経験だ。

見守るだけで身体構造に変化がもたらされる例

 

 

 

イールドの意味〜馴染む感覚

身体が怪我など危機を感じたときに,空間に対する認知が変わります。例えば,注射を打たれれば,その皮膚の周辺,組織のみならず,その周りの空間も別の感覚として捉えることになるでしょう。その周辺に何か対象があると,はっきりとした痛みのような感覚ではないけれども,何か落ち着かない感じやうっすらとした違和感が生じることが予想されます。ムチウチのような衝撃もそうですが,正にその事故が起きた時点では,症状として捉えられるような違和感はないとしても,それが時間をかけて影響を与え続け,何らかの障害をもたらすことがあるということです。

この時,身体はそれなりに今の状況に順応するために,慣れようとします。違和感や不具合があろうとも,その状況に慣れた状態になると,それが基本の状態となります。身体はいかに楽になろうとも,すぐさま慣れた状態から変わろうとすることには抵抗があります。変わることにはリスクが伴うからです。頭で分かっているけど,止められないということの一つの原因として,変化より”慣れた状態”を優先する,保存しようとする力が意外にも強いことに驚かされます。

そこから脱するとしても,今まで慣れた状態というのは,それなりの秩序の中で見えない関係性とのバランスで成り立っています。施術者からみた都合のいいような変化が中々起こらないのは,見えない関係性があって,そこに慣れ親しんでいて,それなりのメリットがあるわけです。

したがって,別の秩序の形態を得るには,別の関係性を作るためにどうしても時間が必要になります。そして,前の状況より,慣れ親しめそうな状態に方向づけされる必要があります。

では,どうやって?

慣れた状態から,馴染む状態へ

慣れる(get used to)とは,主体が一方的に克服してその状態に馴化すること。それに対して,馴染む(fit in) は,周囲の環境と調和している状態になります。慣れるが,調和というより無理に合わせる部分があるのに対して,馴染むには周囲と相互作用しながら,落ち着く(settlle)感覚が伴います。 settleには,移動していたものが最終的に定住するという意味がありますが,足場を見つけてその場所に落ち着くことは,あらゆる生物の本質的な最初の動き=イールドにつながることになります。

発達する過程でも,さらに現在身体の中でも細胞が成長するのに使われている動きがイールドです。この感覚と動きが起こるためには,周囲が安全であることが前提になるので,イールドが起こるということは,その場所を通して,安全に重力と馴染むという感覚と動きがセットになっています。心身がバランスを失っているような状況では,あれこれ行う前に,まず身体を休めてエネルギーを蓄えることが最優先です。

災害が起こった直後に,心のケアがどうこういう前に,まず被災された人々が心身ともに休息できる安全な場所を確保することが最優先であることと同じ原理です。

安全な状況でまず,そこに落ち着くこと,それによって,身体はやむを得ず適応して得た慣れた状態から,それよりも周囲と馴染んだ状態と感覚があったことを思い出すことで,変化してもリスクはないことを納得した上で必要なプロセスを開始するのではないか,と考えています。

イールドがまず起こるような場を設定することが,セッションの基盤であり,本質的なことだと考えています。そこが抜けていると,変わったことはわかるけれどもそれが馴染まない,定着しない,ということになってしまうのだと思います。

脳内での報酬という形で行動パターンを変えようとするアプローチもあるようですが,私は,心身のバランスを崩した状態に慣れた状況から脱するには,まずその場所に安心して落ち着くことによって,身体が周囲の環境に対する認識が変わり馴染んでくることで,重力を含む外側との関係性が変わるきっかけになるのではないかと考えています。

それが,イールドが身体構造に変化をもたらす要因の一つだと思います。

 

職場復帰をサポート

職場の配置換えに伴って,同僚からの嫌がらせが原因で鬱状態となり,休職中だった方が,ロルフィング10シリーズを終了されました。

2ヶ月で10回を終了し,それに伴って身体に安定感がでてきて,最終的に精神科で処方されていた薬の服用の必要がなくなり*,職場に復帰できるレベルにまで回復されました。薬を服用すると身体が重く動く気力がでなくなり,それによって様々な障害が生じたとのことでした。

職場での理不尽なハラスメントも問題ですが,さらに処方された薬の副作用も無視できない問題です。薬が効き過ぎてしまう可能性や,合わないケース,副作用が強すぎる場合などいろんな可能性があると思いますが,この”動く気力”を奪ってしまうとしたら大問題です。以前脳梗塞の後遺症に苦しむ方に10シリーズをお受け頂いたことがありますが,気になっていた痺れが全く無くなったわけではないが,セッションを終えて,動く気力がでてきたことが大きい変化だったと仰っていたのを思い出します。運動をするという行為というより,実際には動作はなくても,動かそうとすれば動かせる,動かそうとすることに抵抗がない状態が,心にとっては重要な意味を持つようです。

様々なハラスメントをきっかけに,心身のバランスを欠いて,合わない薬でさらに抜けられないループに入ってしまう方は少なくないような気がします。

普通は人が人である限り,まさかそんなことはしないだろうということを平気でするような悪意のある人は確かに存在します。残念ながら。そのような場面に出くわした時に,自分を必要なだけ守る姿勢も必要です。さらにそこから,薬に悪影響があるということも知っとく必要があります。深みに入ると何が何だか分からなくなりますが,とりあえずは,自分の居場所を見つけてそこに落ち着く感覚を思い出して,必要な活力を蓄え直すことではないかと思います。

いずれにしても,ロルフィングのセッションを,職場復帰に役立てて頂いて,うれしいです。

*注:医師の監督の下での服用停止されています。

 

 

Rolf Movement5シリーズ 実施例

他のロルファーの方から10シリーズロルフィングを終了され,その後Advancedシリーズを受けた方から,Rolf Movement Integrationの依頼がありました。骨盤周辺,股関節に違和感があるとのことで,その改善を希望。

Session 1

ミッドライン(中心線)に対して,イールドするcapacityを上げるために,横向きで,ワークしました。さらに臀部への注射の影響があると予想されたので,臀部とその周辺の空間との関係性,親和性を回復するためのタッチ。実際には触れずに周辺に手を置くことで反応が引き出されます。このワークによって,違和感はほとんど減少したとのことです。次のセッションまで10日間ありましたが,セッション2の直前に撮ったBefore 2と比較すると,セッション1で得られた頭部の支え方が維持されていることがわかります。

Session 2

前回は骨盤の外側に働きかけしたので,今回は骨盤内部,内臓の容れ物としての骨盤を骨盤底を含むTrue Pelvis(真骨盤)内に着目。ワーク後,上方にリフトされていることが分かります。骨盤底,閉鎖膜,恥骨結合,仙腸関節,これらはどれ一つとっても重要な構造で,適度な張力,微細な動きを引き出すことは,多くのメリットをもたらします。頭部に対しても側方に対して休めるようにワーク。

Session 3

うつ伏せで下肢から脊柱のつながりを引き出しました。臀部の組織のモティリティと呼ばれる微細な動きが出てくるのを待ちます。一連の働きかけによって,股関節周辺の違和感は皆無になったようです。

Session 4

仰向けでのワーク。大腿上部にもワクチン接種を受けている例も多く,この影響によって周辺組織に制限が生じ,骨盤と大腿部の連携が乏しくなることがあります。通常のベーシック10シリーズロルフィングではこうした観点で臀部や大腿部にワークすることは恐らくないと思いますが,ワクチン接種の影響は私達が思っているより大きいものがあります。仮に必要だとしても,受けた医療処置による影響を無くす程,ホメオスタシスは向上し,統合状態が高まる可能性があります。

このセッションの後,クライアントの方から,ワークに興味がでてきたので,120分枠を試してみるか,5回から8回にしようか迷っているとの感想。

Session 5

前回のセッションの後,アクシデントがあって,左足裏に安全ピンが刺さってしまって,しばらくびっこをひいていたとのこと。思ったより回復が早いとのことで,ただ,右半身にはかなり緊張を感じている。傷は修復しているが,右足が地に対して安全に着地できないという知覚レベルでの偏りが生じているため,足へのイールドタッチが有効となります。それぞれの足底に触れるか触れないかのタッチで空間との関係性に影響を与えると身体全体にも動きが伝播していきます。最後は,後頭部から小脳や延髄が休息できるように促すイールドタッチ。激痛や強いストレスがかかると,頭部の深部にも緊張が蓄積することがありますが,このタッチによって,肩と首がとてもスッキリしたというフィードバック。

全体としてかなりまとまったので,一応完結ということになりました。

クライアントにとって,最初の10シリーズはハードタッチだったので,Movementは興味深い体験となったようです。

Rolf Movementは,機能的側面から行うRolfingSIという言い方もできますが,いずれにしても,問題を解決したり,”治す”という観点からではなく,どこに変化しうる可能性があるのかを探して動きを引き出すプロセスです。

 

以下,セッション前後の写真を動画でまとめていますので,どうぞご覧下さい。

Rolf Movement 5 series