治療ではないという意味

ロルフィングは身体の再教育であって,治療ではない,といいますが,決して,「治そうとしない」わけではありません。つまり,施術者が症状の改善だけを見て治そうとするマインドで処置をするのではなく,その手前にある,治ろうとする力に受け手の方がつながる手助けをすることが,ロルファーの仕事なのだと思います。

経験を積んだロルファーなら,ここを広げると痛みはすぐ緩和されるだろうとかあたりをつけることはできるでしょう。でも,ひょっとすると,その場所から遠いところに触れることが,そこが変化する準備になって,痛みを一時的に和らげるより,痛みを通して何かと向き合う必要があったり,或いは,身体全体としては休息する必要があって,生活全般を考え直す時期なのかもしれません。

ひょっとすると,ですが。もちろん検討違いの下手な施術だと,何かの反応はでるけど,それは好転反応ではなくて,身体がバランスを取り直すための仕方なくの再調整だったりすることもあります。

そういったこととは別のレベルでの話ですが,ロルファーが真摯にクライアントに向き合って,その場所を制限があると分かっても,どうしても触れることができない,という感覚になって,それに従った時には,余計な介入のない,正しい判断となるはずです。その場所にあえて触れないことで,別の場所が変わることで問題と思っていた箇所が変化する体験をすれば,受け手が身体のつながっていることをその過程を通して理解する貴重な時間となります。

ロルファーが自分の肚とつながり,受け手と深く共鳴しているときに,その流れや文脈に従って,触れたり,或いは十分に変化を離れて見守るとき,必要なことが必要なだけ起こるのだと思います。その流れにあれば,何かを治す,治さないというマインドではないはずです。