体力がない方には,陰を上げる必要がある

イールドのアプローチでセッションを受けた方が,どういう原理でバランスが変わるのですか?という質問を度々受けます。ロルフィングについて聞いていた印象と随分違う,軽すぎるタッチにも関わらず変わることに不思議だと感じるからです。

 

古典的ロルフィングの考え方は,過緊張の筋膜を弛めて,全体の張力バランスをとる。つまり強すぎる陽を減らす。そのことによって,今まで,あまり使われていなかった場所が自ずと動員されることによって,陰が立ちあがってくるのを促すやり方です。別の見方をすると,強烈な圧力を加えるストレスによって,身体がある種の危機的状況になることで,ホメオスタシスに喝をいれて,生命力にスイッチを入れるという荒技が功を奏する,という理屈ではないかと思います。

こうした,一見するとかなり乱暴な働きかけですが,統合への変化が促されることは確かにあります。全体のエネルギーが元々高くて,適応性がある場合には,陰が自ずと立ちあがってくる体力がある場合には,うまくいくでしょう。人間にとって,バランスがオフになって,転倒するということは生体にとってかなり危機的なことなので,それを回避するためには,全体でなんとかする力が無理矢理にでも発動する仕組みを応用していることになります。

一方,元々活力が低下している場合や,荒技的な働きかけに対してそれを受容できない,強い侵襲的介入によって,神経系や筋骨格系のバランスが崩れてしまうタイプもいます。私もこのタイプに属していますので,基本的に強く揉まれたり押されるとそれだけで,身体が悲鳴を上げます。実際に中医学的にも,外部からの強い圧力には適応性が低い傾向があると分類される,肺虚という証が存在するそうです。ということは,こういうタイプへの働きかけは,陽を下げようとする働きかけではなく,陰をまず上げてやるという戦略の方が適していることになります。

イールドのアプローチで行うのは,まず全体のシステムの微細な動き=ゆらぎを全体に引き出し,細胞内部のダイナミクスを上げます。今まで陰として機能に参加していなかった場所にも広範囲に動きがでてくることで,低張性たっだ組織が適度な張力に向かうことになります。過低張で支えに参加できなかったパーツも全体と連携する方向づけがなされるのではないか,つまりは陰を上げるということなのではないかと考えています。