声のパフォーマンス

身体を楽器に例えると、全体がよく響く方がいい。ロルフムーブメントの観点からは、身体にはいくつかの振動板〜ダイアフラム※構造がある。骨盤底や横隔膜もそれらの一つである。足底も含めて、ダイアフラム同士がよく響き合う状態をロルフムーブメントでは引き出す。それによって声のパフォーマンスが変わることはよく観察される。一方、水平面の共振はしばし注目されるが、垂直面の構造にも当然のことながら重要である。立位での位置関係になるが、上肢と下肢の骨間膜、胸郭内の縦隔、頭部の大脳鎌などの垂直面の振動板として捉えることができるので、これらの共鳴を引き出すと、さらに声のパフォーマンスが変化する。

しかしながら、実際に声を出す段階になると、さまざまな緊張のパターンが邪魔してパフォーマンスを上げる障害になる。たとえば、声を出そうとするあまり、喉や胸郭上腔をぎゅっと狭めてしまうパターンがあると、どんどん声帯に負担がかかってしまう。いかに空間を狭めず空気の通りを妨げないように響かせるかがポイントになってくる。

からだの内側での共鳴だけでは、実は足りない。周囲の空間に響かせる必要がある。そうなると、空間との関係性が鍵になってくる。スピーカー自体の性能がよくても、部屋の構造とその配置が大切なのと同じである。

声といっても、様々な音域があるので、響かせやすい音域がそれぞれ異なる。声というと声の出し方に注意がいきやすいが、声帯を通して、身体のどのダイアフラムと共振させて、空間にそれを響かせていくか、といういくつかの段階がある。「声を出す」と聞くと、出力の一方向性が強調されるが、響くためには、振動板間、からだと空間との間の双方向の共振が含まれることにきがついていると、それだけで声についての捉え方、響かせ方が変わってくる。

声のパフォーマンスを上げようとするとき、どの段階がネックになっているのか、どの振動板の共振がイマイチなのか?その制限のパターンがどこから生じるのか?見極める必要がある。

※ダイアフラム:ロルフムーブメントでは、身体内の空間を仕切る水平膜として機能する構造を指す。口腔底、骨盤底、足底などが含まれる。音響学では、振動板と訳されている。