感染防止から、発症防止へ

パンデミック後の抗体検査結果で、すでに広範囲に多くの方がコロナウイルスに感染した形跡が示された。よくある他のヘルペスなどのウイルスが伝染するのと同じことなので驚くことではないが、もはや、感染拡大を阻止する段階ではなく、新しいウイルスは行き渡った後なので、感染するかしないかに過剰反応する段階は過ぎて、問題はそれが発症・重篤化しないための対策である。実際の致死率もわかってきて、カリフォルニア州では0.03%という数字がでていて、当初想定された値よりかなり低い、過剰に怖れる必要がないこともわかってきた。

多くのウイルスは、宿主のDNAに組み込まれたり、巧みな寄生戦略で、完全に排除することは難しい。したがって、それをいかに抑えておけるかは、生体に備わっている自然免疫、漠然と抵抗力と呼んでいるシステムに依存している。

近年の免疫学の研究から、抗体産生を担う獲得免疫は、自然免疫によって調整されていることが明らかになっている。ということは、獲得免疫の仕組みを強化するはずのワクチンをいくら多用しても、その土台となる自然免疫がしっかりしていないと、機能しないことになる。自然免疫は、日々の、よく寝て栄養とって、気持ちよく生活することに支えられている。

この気持ちよく生きるということは、実際に自然免疫の活性の一つの指標である、ナチュラルキラー細胞の活性が上がることにつながる。特に特異的な抗体、ワクチンに頼らなくても、疫を免れる系はすでに備わっている。裏を返せば、ワクチンを作って売りたい業種にとっては、自然免疫があって、それが主軸ということがわかってしまうと、お薬が売れないので不都合なのだ。

この自然免疫がどれだけのレベルかは、変動し続けているが、間違いなく働き続けている。生物によっては、獲得免疫を持たず、自然免疫だけで生きている種も存在していることから、そもそも本質的な系ではないのだ。

国でいうと、ちょっとしたならず者なら、警察の力で治安が保たれるが、外敵の規模が大きくなると、軍のレベルでの防御が必要になる。警察が自然免疫なら、軍は獲得免疫ということになる。

コロナウイルスで問題となるのは、サイトカインストームと呼ばれる、免疫の暴走で、炎症性サイトカインが制御されずに、いたるところで炎症反応を過剰に起こしてしまう状態を指す。大規模なテロが多発している状態、或いは軍が暴走して、シビリアンコントロールが利かずに、軍が暴走している状態も、サイトカインストームに似ている。いずれにしても、国家社会における自然免疫としての、外交や警察がしっかり機能していれば、軍の力に過剰に依存する必要はない。

ウイルスは、常に外からやってきて敵であるという見方もできるが、遺伝情報の相互作用するための媒介物という見方も進化的には見ることもできる。したがって、いつまでもそれを外に排除するという行為には限界があり、そもそも不可能である。

したがって、すでにコロナウイルスに限らず多くのウイルスは自分の中に取り込まれていて、ただ、自然免疫がしっかり機能している限り、それが自分達を傷つける存在ではないという認識を持つことが必要で、自分達にできることは、自然免疫でできるだけ落とさないこと以外ない。それが、サイトカインストームを抑えることに留まらず、様々な疾患の元凶といわれる慢性炎症を抑え、健康寿命を延ばすことにつながる。