お通じの改善

排泄はいうまでもなくとても大切。身体が変化して、代謝が向上しても、要らないものを身体の外に出せなければ、自己調整や自己組織化がスムーズに進まないでしょう。

身体で摂取する栄養物のほとんどは利用されず、実際はすでに持っている資源を再利用してホメオスタシスが保たれているというオートファジーの事実からしても、ホントに要らないものは外に出しておかないと、生命維持のためのリサイクルは効率よく回らないことが容易にイメージできます。

腸内菌叢の重要性が、昨今叫ばれるようになりました。腸内の菌叢が身体の免疫に積極的に関わっているというデータが示され、乳製品会社はこぞって、プロバイオティクスの新商品を開発して、特定保健用食品の認可を取り付けています。一方、外部からのその生体にとっての外来種を入れても、実際にはそれほど根付かないということも分かってきたようです。

外から摂取した菌が、いくら有用とわかっていても、それを受け取る側の腸という土壌との相性、そしてすでに在来している菌叢との相性があります。大腸菌の研究では、不和合性という現象が知られていて、組合せによってAとBという大腸菌は共存せず、Aが細菌毒を分泌して、Bの生育を抑制して、縄張りを荒らされないようにする防衛策をとっていることになります。ですから、実際にその菌が根付くかどうか?或いは元々の菌叢を荒らさないかどうか?は実際に摂取してみないと分かりません。

自分の経験ですと、ヨーグルトに入っているロイテリ菌は比較的私の身体は受け容れるのだけれど、L8020は便通が滞りがちになります。特許取得の経過を見ると、L8020を応援したい気持ちはあるのですが、身体の反応なので仕方ありません。ただ、タブレット化したものを一錠服用する程度だとL8020も大丈夫です。

ということでとれあえず、飲んで確かめてみないと何ともいえないのが、プロバイオティクスの難点ですが、一方、菌叢の餌を供給するという考え方のプレバイオティクスには、そういって相性問題が起こり難い。元々在来する菌が増えるのを助けるわけなので。もちろん、人間の頭が考える都合のいい菌だけが、選択的に増えるような餌があるとは考えにくいですね。

消化管は口腔から直腸まで一つながりのチューブとして機能していますから、菌によって、ある部位にシビアに特異的にその場所だけということはないかもしれませんが、それでも、ビフィズス菌に関しては、大腸で主に生えるとされています。つまり、最も便通に影響しやすいことになります。ビフィズス菌のためのプレバイオティクスで大切なことは、口から摂取するため、大腸まで届くまでに、分解されてしまって、肝腎のビフィズス菌にものが届かないと意味ないわけです。

プレバイオティクスとしての乳糖果糖オリゴ糖(乳果オリゴ;商品名オリゴワン)は、難消化性、つまり胃などで分解されずに大腸まで届くことが分かっています。で、実際に7g(スプーン一杯)づつ、毎日摂取してみたところ、確かに便通や便の質に変化が生まれ、快便になりました。

ヨーグルトだと、含まれている乳酸菌以外に、牛乳由来のタンパクやホルモン、クリーム成分が体質に合わないこともあります。その点、オリゴワンだとそれらの影響もなく、非常にマイルドにお通じの改善が促進されました。

そもそも定着しないような菌を継続的に摂取するのは、元々の菌叢や腸にも負担をかけることになる可能性があるでしょうし、何よりこのオリゴワンは安価で、所定の一日7gは、約20円で、巷の健康食品の比較にならないほど、リーズナブルといえます。

便通の改善のために、薬剤を常用したり、腸にやたらと外から負荷をかけて、「治療する」のではなく、一日20円で元々住んでいる菌を育んだ結果として便通が改善できるなら、試してみる価値はあると思います。昔の古巣(株)林原を退社して25年経っているので、オリゴワンを勧めたからといって何のマージンも得られませんが、製品は間違いなくいいのでご紹介しておきます。

オリゴワン(乳糖果糖オリゴ糖の商品名)のAmazonからの購入先 ↓

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以下、乳糖果糖オリゴ糖の有用性を動物実験結果を元に、私の敬愛する林原元上司の福田教授が、わかりやすく説明しています。

吉備国際大学福田恵温教授(元林原生物化学研究所所長)

注:私自身、外から乳酸菌を補うことを否定しているわけではありません。風邪を引いたときに服用する抗生物質や、食中毒防止のために添加されている、お弁当やお惣菜などに含まれる保存料としての防腐剤は、選択毒性があるわけではないので、当然のことながら、腸内に元々いる菌がダメージを受け、有用な菌が減ったりして、菌叢が乱れる機会は何度も腸は経験しているはずです。

したがって、たまに外から何らかの菌を補う必要性はあると思いますが、菌の多様性と定着の相性問題を考えると、同じメーカーの同じ菌種を継続的に摂取するより、様々な菌種を含むような製品をちょっと試してみるようなやり方が、理に叶っているのかもしれません。加えて、特に生野菜や果物など天然に含まれている乳酸菌が存在することも忘れてはいけないでしょう。結局、古来から続いているような発酵食品を常用する食生活には科学的な意味と根拠があって、その意味を再発見することになるだけなのかもしれません。

Rolfing(ロルフィング)を受けにくるクライアントの中にも、お通じの悩みを抱えている方は少なくないです。食生活を変えなくとも、第4や第5セッション後、骨盤底が広がり骨盤が内臓を支え易くなって、さらに腸腰筋が機能を取り戻し、腸菅に適度な刺激を与えるようになると、便通が改善することも珍しくありません。ということは、菌の餌だけでなく、適度な物理刺激、つまり動きだとか、腸にとって好ましい環境が整うと、菌が腸内の細胞に良い刺激を与えたように、腸もまた、菌にとっていい影響を与える相互関係があるに違いないと思うのです。腸内が活性されていない、動きがなく停滞している状態だと、腸内も溶存酸素が少ない状況になり、食中毒の原因になるような毒素を出す、嫌気性のウォルシュ菌やボツリヌス菌などが生育しやすい環境になる可能性も高まるでしょう。