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目指すところ

セッションで最終的に目指しているのはどのような状態でしょうか?

常に何処かの治療院やマッサージに週末駆け込むような生活を送っている方がいるとすると、とりあえず、通わなくてもやっていける自律的なバランス。

依存あるいは習慣的に通うのではなく、必要と感じた時には、他者の助けを借りて、微調整によってリセットできる状態が健全と考えています。ストレスや負荷がかかったとしても、一晩でリセットできる状態で、別の見方をすれば、トラウマのエネルギーや迷走電流が溜まりにくい、流れのいい身体です。

どんな優れた治療方法であれ、その治療体系に一旦はまってしまうと、頻繁に通ってバランスするという”習慣”ができてしまい、そのパターンでの平衡が保たれると、身体もそれに甘んじてしまい、本来自力で排出できる能力を怠けさせて、その力を奪うことになります。

どんな形であっても、パターン化、習慣化するということは、施術側のビジネス的囲い込みは成功しても、主体は自由を制限されることになります。

身体は、高度に統合がされればされるほど、強い圧力や痛みは過度の刺激となってしまい、身体はより繊細で精妙な刺激を求めるようになります。いい施術を受けたら、以前の雑な施術には戻りたくないし、より乗り心地のいい車を求めるのと同じです。必要最小限の介入に十分に反応して自己組織化を発揮できる状態、それが目指すところです。このレベルになると、むしろ過度の介入は害となり、かえって統合感が薄れ、バランスが悪くなりように感じますが、それは正常な反応といえます。

適切で繊細な介入によって、肉体を越えた深いレベルでの変容や気づき、解放もしばし起こるようになるため、セッションがより特別な意味を持つようになります。

臍帯の重要性

お腹がポコンと出ていて、背中が反っている身体のパターンをたまに見かけます。背中が反っていると腰椎を圧迫するため、慢性的な緊張を生じやすい。背中を反らせるように習い事や教育的指導をうけているケースもありますし、自分の真っ直ぐというズレた思い込みが影響している場合もあります。

それ以外に、出産時に臍帯を通して衝撃をうけたかも?しれないケースがあります。衝撃を受けると何かしら、フリーズしてあるパターンをホールドするようになります。これを恩師のCarol Agneessensは、umbilical shockと呼んでいました。

胎児は、臍帯を通して、栄養や酸素、老廃物の排出など生命維持に関して母胎の助けを受けとりながら生き延びているわけで、それを子宮から出た途端に何の準備もなく、すべて自分でやらなければならないわけですから、それは一大事です。酸素呼吸を開始しても、排出や代謝系もすべて一変に移行するのは、あまりに一度にやり過ぎかもしれません。自然指向の分娩だと、臍の緒を切るタイミングもゆっくり時間がとれて、それなりにある程度は準備ができるかもしれません。

それができないとなると、想像ですが、臍帯とつながりの深い場所にショックが残る可能性は十分考えられます。影響を受ける場所として、消化器系、腎臓、泌尿器・生殖器系も含まれます。

それぞれの重要性は割愛するとして、腎臓は特に老廃物の濾過という生理学的機能、赤血球造血因子の産生以外にも東洋医学でとても重要視されます。アタッチメント(愛着)と深い関わりがあるという身体心理学的な解釈もあるようです。

じゃあ、どう扱うのかということになりますが、安全に扱うには、まずその周辺の空間を与えることです。それには、ロルフィングで重要視されるQL-腰方形筋が十分な長さがあること、12番目の肋骨が自由であることが上げられます。

十分な空間が確保されていない段階で、腎臓自体の動きを急に活性化させられると、狭い空間で平衡状態を保っていた均衡が突然崩れることになります。内臓にワークするときに注意しなければならないのは、その動きがでてきたときに対応できるスペースがあるかどうか、です。

タッチするというのは予想以上に相当な情報量を伴う介入なので、何の準備もなくエントリーレベルで腎臓を扱われて、相当ダメージを食らってしまう深刻なケースも実際にあります。その場合はセッションによるトラウマ化で問題作りにお金と時間を浪費したようなものです。

そもそもを辿って、臍帯を通して受けたショックが制限の上流にあるとするなら、臍帯を通して、安全な感覚を取り戻す必要があります。

臍帯を扱うワークは相当繊細なので、まず内臓のコンテイナー(器)を支える身体構造がしっかり整っていることが前提で、それによって身体の適応性が確保され、その上で、臍帯や腎臓を扱う準備がやっとできるわけです。

それにはある程度、胎生学的なアプローチの経験と実績が必要だと思います。

自分に合った学び、施術

はっきりわからないけど、タイミングが合っていたり、何となく講師の先生の顔写真にひかれるとか、そんな一見曖昧な判断で参加したトレーニングはかなり自分にとって意味があるものだった経験がある。一方、今は亡き創始者から直接習ったことがあるとか、人気のようだから一度受けてみるか、という感じで参加したトレーニングにはハズレが多い。あくまで自分の印象だけれども。

売れ筋の商品だからという理由だけで買うマインドもいかがなものかと思うけれども、漠然と大多数が選ぶなら間違いはないだろうということを信じ込まされているからなのか?自分が求めることと、大多数が選ぶものがたまたま一致することもあるかもしれないが、それは珍しい例だと思う。

自分がもし、独自のものを追求したいとか、自分に最もフィットしたものと出会いたいと思うなら、むしろ、多数派が選んでいるものと敢えて異なるものを選択する癖をつけてみたらどうだろう?長いものに巻かれてばかりいると、自分の感性が埋没してしまう。

何か施術を受けてみようとする。その施術者の履歴は立派で何か権威がありそう。何かしっくりこないような腑に落ちてない感じがするけど、とりあえずそれは無視して、情報から確からしいと納得しようとして試みる。実際施術を受けてみると、やはり何かしっくりこない感じがつきまとう。そんな経験はないだろうか? 効果を感じないのは、自分がおかしいからなのか?? などと自分を疑ってもしかたない。結果とその印象がすべてなのだ。

油断すると、自分がどう感じるのか?より、漠然とした多数意見や常識という仮想頭脳に判断を任せることになり、主体がどんどん自分から離れていく。あの人の推薦するものだから確かに違いないと思って、信じ込もうとする。それは結果的には、一連の責任を自分ではとらずに人のせいにしているのと同じだ。

著名人や知り合いが推薦したとしても、あくまで参考に留め、選択した責任は自分で取らなければいけない。そういうことを放棄して、自分にフィットしない、或いは身の丈にあっていないことをやり続けても、必要なことは何も起きない。

お金と暇に任せて、何かすごいヒーラーや凄い先生を常に探し続ける人をたまに見かけるが、それは単なる欲の追求であって、その割り込み?!によって、本当にそれを必要とする人が、はじかれ、後回しになっているかもしれない。

自分にフィットする施術者はそう多くないと思う。それぞれが必要な出会いになるには、欲からではなく、うまくたくさんのモザイクがそれぞれにはまり、全体が棲み分けされるような平安な状態があるように思う。

蝶形骨周りの空間の重要性

人によっては、一度に大きな変化を伴う介入をたくさん受けても全く問題い方もいるが、中には、可動性が急激に増すと、平衡感覚つまり前庭の処理が追いつかず、目まいがしたり、ふらついたり気分が悪くなって中々適応に時間がかかる場合もある。

先日のセッションで、そのようなケースを扱ったのだが、セッションが進むに連れ、感覚が外に広がるものの部屋の中に限定され、身体感覚は薄く、解離に似た状態になった。その方はもともと横向きで寝ることが苦手とのことだったが、側方に荷重がかかると側頭骨から蝶形骨にかけて物理刺激が加わり、蝶形骨付近の空間が狭まって、内耳付近にも影響が及びやすいのかも、と推測した。

蝶形骨とその周辺の空間は特に繊細に扱わなければならない領域で、クレニヲの講習にいってセルフワークしているうちに、蝶形骨が内側にグッと入ってしまい、それから鬱傾向になってしまったクライアントの話を聞いたことがある。また、未熟なクレニヲのセッションを受けてからずっと鬱になってしまった方からも話を聞いたことがある。そういうケースの場合は、病理的や心理的な原因に由来するわけではなく、単に身体構造的な問題なので、いくら薬や心理カウンセリングを受けても見当違いということになる。

その回復には、まず蝶形骨周辺の結合組織の張力バランスを整え、頭蓋骨間の空間を確保してあげる必要がある。硬膜などの深部膜組織の可動性も関係してくる。

セッションによって、多少不安定感が増したが、十分時間をとりながら、蝶形骨や側頭骨周辺の空間が広がるように知覚からも働きかけることで、セッションも統合へと収束した。解離傾向にある場合は、筋肉の収縮活動をしてもらいながら、正常なトーンと存在感が増すような働きかけもまた重要である。

心臓弁手術を受けた方へのワーク 

今,心臓弁が先天的に不全だった方が,手術を受けられて,その回復の目的でロルフィングのセッションを受けにいらしています。4年程前に10シリーズを終了されていたのですが,ずっと気になっていた心臓手術を思い切って受けたとのことでした。

心臓の拍動を感じるとそれが不規則になったりするのを感じて不安な感じになるため,以前は心臓に意識を向けるのが嫌だったそうです。

思い切って手術を受けて,その影響はあるものの,心臓を感じることに抵抗がなく,健康に自信がついてきたとのことです。開胸したことで,肩の可動性も減って,手術以後,しっかり休息することが難しくなっていたようですが,それもロルフィングで肩も楽になってきて,ちゃんと深く眠れるようになってきたそうです。

なにより,ロルフィングを回復に役立てようと思ってきてくれたことや,10シリーズを終えたときより,自信がついてきていることが彼の表情から伺えるのもまたうれしいです。

必要な手術は受けて,ロルフィングでしっかり回復する。うまくかみ合っている感じがします。

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