What is Rolfing ?
ロルフィングとは?
ロルフィング®(正式名称はRolfing® Structural Integration)は、生化学者であるアイダ P. ロルフ博士(1896~1979)によって確立された身体を構造的に統合するためのホリスティックなシステムです。アイダは、50年間にわたって、人間がより効率的に機能するための,バランスのとれた身体を創りだす手法を研究し開発しました。彼女は、身体の筋膜組織(Fascia)に手技により働きかけることにより、各部分があるべき配置に調整されると、肉体的あるいは感情的な傷(トラウマ)から解放され、肉体が機能的になるだけでなく、感情的、心理的そして精神的にも調和への変化- 統合がおこることを見いだしたのです。他の技法と比べユニークな点は,機能的で有機的なまとまりのある身体へ再教育し,外部環境との関係性,とりわけ重力に着目する点です。受け手が身体をより満足のいく状態(Well-being)へと移行するためのプロセス ,それがRolfing®です。 Rolfing®と名付けられたStructural Integrationは,The Rolf Instituteによって認定されたロルファー™から提供されます。
ロルファー田畑浩良の観点
細胞生物学者のIngbar博士が提唱したように,身体を構成する細胞は,テンセグリティ,Tensegrity = Tensile integrated structure 張力によって統合された構造体です。バックミンスターフラーの共同研究者だった梶川泰司氏の作成した共鳴テンセグリティモデルのように,細胞は共鳴テンセグリティとして,しなやかな柔軟性と重力に対する安定性を両立させています。この構造を成立させているのは,共鳴です。細胞と細胞との間,細胞と細胞外マトリックスとの間,組織間,臓器間,システム間,,,身体と身体,身体と環境というように,絶えず身体内外で共鳴が起こることが,相互作用の前提となっています。 ロルフィングは,この間の関係性を取り持つ張力に働きかけることで,人間の構造と機能を進化させる可能性を持っていると考えています。
Principles
ロルフィング®(Rolfing®)の原理と方法
骨の構造のみでは直立できないように、骨をつないでいる筋肉や靭帯などによって初めて、姿勢が決まり立つことが可能です。身体をテントに例えるなら、骨は圧縮材としてのポール部分に相当し、ポールだけをまっすぐにしようとしたり、1つのロープだけを修正しても、全体のロープのバランスを整えない限り、テントは上手く張れません。つまり支柱ではなく構造にとって重要なのは,張力材,つまり骨周辺の柔軟な結合組織の吊り合いだといえます。ロルフィングは、テントのロープやシート部分に相当する筋肉群のバランスを整えるために、筋膜や靭帯を通じて身体の構造を整えます。筋膜の物性と神経支配の筋肉の張力により,その筋肉全体の張力が決定するので,筋膜に直接あるいは,感覚器を通じて神経系と対話しながら,よりバランスされた状態を身体に入力していきます。制限されていた組織が有機的かつ適切な張力を回復することがきっかけとなって,自らバランスを再構成する潜在能が引き出されます。受け手の身体をどう捉えるかというロルファーのPerspective(観点)が,ワークの仕上がりに大きく影響を与えます。
基本的なロルフィングは,10回のレシピと呼ばれるシリーズから構成され、受け手の身体が、持続的に快適なバランスを維持し、全身がつながりをもった美しい機能的な動きができるようにデザインされています。
ロルファー田畑浩良の観点
アイダ P. ロルフ博士が亡くなった後,同Instituteの上級ロルフィング教員であるJefferey Maitland博士は,10回のレシピに内包されている根本原則/基本方針を5つにまとめました。全体性,適応性,サポート,空間的広がりの調和,完結です。これらの方針に沿って,受け手の状況に合わせてセッションを組み立てることができます。彼は独自に現象学や禅の研究から,触れないロルフィングを発展させています。ロルフィングがファッシャへの直接的な物理的刺激を伴うことは必須ではないことに気づいていました。そのJeffereyに,彼が主催したピアセミナーの席で,イールドの技法のデモンストレーションを観てもらったところ,”Sweet , sweet !”といってとても喜んでくれました(雑誌ソトコト記事参照)。ロルフィングに対する様々な介入,用いられるテクニックは多種多様ですが,この5つの方針をおさえた上で,ロルファーが探求し,自由に発展させていくことが大切だと考えています。ロルフ博士の側近でもあった,現名誉ロルフィング教員のJim Asher先生によると,「ロルフ博士も生前,博士のやり方をまねるのではなく,ロルファーが自分がやりたいようにロルフィングしてほしい」と仰っていたとのことです(雑誌ソトコト記事参照)。
Reliable Somatic Art
身体の機能性を高め、自己の可能性を向上させるための確かな技法
オリンピックメダリスト、大リーガー選手、音楽家、作家など世界の一流の人々が、Rolfing®を推奨し、パフォーマンスの向上のみならず、さまざまなレベルに及ぶ変化を感想として述べています。学術的な研究結果も発表されており、UCLA運動力学科のValerie V Hunt博士らは、ロルフィング後の身体の動きがよりスムーズで自然でダイナミックかつエネルギーにみちていることを報告しています。また、John T. Cottingham PhD.らは、ロルフィングが交感神経を鎮め、自律神経を安定化させることを示すデータを報告しています。(Physical Therapy, vol.68,No.9.pp.1364,1988) 年齢を問わず,安全かつ確かに身体を根本的に調整するための技法として,Rolfing®をお勧めします。
ロルファー田畑浩良の観点
近年の細胞生物学の領域では,メカノバイオロジーが急速に発展してきました。力学的な刺激が,細胞の生化学的反応に変換されることがわかっており,培養細胞の足場の強度が分化の方向性に影響する知見も得られています。細胞死や分化にも大きな役割を持つ,力学的刺激がどのように伝わるかは,元々の細胞ー身体全体の張力バランスがどのような状態にあるのかが重要です。適度な力学刺激が伝達されるには,細胞を含め身体全体が,共鳴テンセグリティ※として機能している必要があります。細胞に適度な力学的な刺激必要ということは,細胞の環境である細胞外マトリックスの張力バランスがいかに重要かということです。ロルファーは,身体が隅々に渡ってできるだけ共鳴する状態に調律するのが仕事です。
※共鳴テンセグリティは,シナジェスティック研究所主幹の梶川泰司氏によって作製された模型を参考にさせて頂いています。
Rolf Institute of Structural Integration
ロルファーの養成および教育機関
アイダ・ロルフ博士の存命中に設立され,彼女の遺産である基本ロルフィング®10レシピの本質を保存し,さらに発展させることと,その担い手であるRolfer™を養成する唯一の教育/認定機関が,米国コロラド州にあるThe Rolf Institute®(現Dr.Ida Rolf Institute)です。身体統合に必要な解剖/運動機能学,生理学に関しての集中的な教育がなされ,入学試験や論文審査,実際のワークを経て,初めてロルファー(Rolfer™)として認定されます。正確で安全にストラクチュラルワークを行うためには,身体についての理解と手が必要不可欠です。
現在のRolf Instituteのカリキュラムでは,受け手の反応を尊重した痛みを強要しない効率的なやり方へと発展し,クライアントとの信頼関係も重視されています。アイダは,最期までInsitituteにおいてRolferの教育に当たっていましたが,彼女の没後も優れたインストラクター達が有効なアイディアを持ち込み,それらを統合しながら,カリキュラムは発展し続けています。画一的なマニュアル的手技を教え込むのではなく,受け手の身体に応じた柔軟な組み立てと,パーソナルスキルを確立できるようサポートするのがインストラクターの役目です。さらに,Rolfing®後の身体がより機能的となるためのRolf Movement® Integrationや,より深いレベルでの統合を引き出すためのAdvanced Rolfing®など,”その先”を学ぼうとする姿勢に応えるためのトレーニングを常に提供し続けているのがThe Rolf Instituteなのです。米国ボールダーを拠点とするInstituteですが,欧州,ブラジル,カナダにも独立した支部組織があり,ロルファー養成や継続教育が提供されています。日本は,2006年にNPO法人日本ロルフィング協会が設立されています。
ロルファー田畑浩良から
2011年以来日本ではロルファー養成のためのベーシックトレーニングが開催されていません。2022年10月時点でも,その再開のめどは立っておらず,Rolf Movement認定コース等のロルファーの継続教育のみの提供となっています。本拠地であるボールダー本校に入学する日本人も多数いましたが,ある時点から語学の要求が高くなってしまうなどの変更があり,私が習った講師陣も引退や辞任されてしまい,事情は随分変わったようです。現在は,ミュンヘンにある欧州ロルフィング協会のトレーニングに入る方が割合的には多くなっているようです。欧州やブラジルにもいい講師は多く,教育課程にも特色があります。ベーシックトレーニングは,支部の地域の活性化や存在意味でもあるため,学びたいというニーズにも応えられる存在であるべきだと考えています。
Rolfers
ロルフィングの担い手 Rolfers
全世界では,1500人を超えるRolferが活躍しています。医師や修道僧,教師,弁護士,外交官,ヨガインストラクター,猟師,研究職などさまざまなバックグラウンドをもつ仲間がいます。日本においては,約120名のRolferが活動しています。その施術者が活動中かどうかは別として,公式に認定されたRolferかどうかについては,Rolf Instiuteの照合ページで確認することができます。
まず,自分がこれだと思うRolferを選び,満足のいくRolfing®体験をしましょう。最初のRolfing®体験は,貴重で重要です。セッション自体,ロルファーの背景にある経験や人間性がどうしても影響するのと,受け手の方とのコラボレイションでもあることから,ロルファー選びは慎重にした方がいいでしょう。認定トレーニング修了後,ロルファーはその後のトレーニングや経験を通して自らのスタイルを各自確立していくので,ロルファーが異なると,タッチやスキルも含めて全く違った印象や体験をするのは珍しいことではありません。
もし,少しでもRolferになる気持ちがあるのなら,そのための資金,エネルギー,時間も必要です。自分のRolfing体験がRolferを目指すモチベーションに大きく影響することを覚えておいてください。自分の身体への探求と実際に機能する身体を造っておくことも大切な準備になります。Rolfing®トレーニングに参加するには,公式認定Rolferから,Rolfing®10シリーズと認定Rolf Movement® practitionerから,5回のRolf Movement®セッションを受けておくことが,必要条件となります。Rolf Instituteの教育プログラムの内容は,更新されますので,本部の公式サイトをチェックして下さい。
ロルファー田畑浩良からの観点
ロルフィングに関わらず,すべての身体技法を行う上で,安全場の形成と術者の知覚状態は表にでない,いわば「Meta-Principles」です。イールドの技法は,どのような技法を学ぶとしても,その大切な準備になると考えています。
ロルファー田畑浩良のロルフィング
Less is more.という言葉を体現するセッションを心がけています。セッションごとのゴールと距離を置き,身体の受容性に応じて,抵抗の少ないところから働きかけます。いってしまうと,田畑のセッションは触れる触れないに関わらず,すべてロルフィングであり,すべて安全場の形成を優先させる空間身体学的なイールドの技法がベースになっています。上級ロルフィング講師のJefferey Maitlandをはじめ,恩師Carol Agneessens,名誉Movement講師のMary Bondら米国の講師陣に高く評価されたThe Art of Yieldを組み入れたロルフィングセッションで身体の探求を深めていきませんか?