動きの質を変える

可動域を上げるためのストレッチなどのエクササイズはたくさんありますが、動きのスムーズさや楽に動かすということをロルフィングのプロセスは手助けします。

歩くという動きをロルフィングではよく見ていきます。足からどれだけその上の構造とつながりがあるのか、連続性はどうか等など。或いは腕を上げ下げしたときに、楽に上げられる角度はどうか?どこから抵抗があるか?左右に違いがあるのか、それらを改善するためにはどうしたらよいかをサポートしていきます。

治療・処置であれば単に痛みなく動かせるようになったで終わると思いますが、その先のクオリティの高い動きができるように、適応性を上げるお手伝いをします。

Differences in movement quality through Rolifng with Yielding embodiment by Hiroyoshi Tahata

どのような違いとなるのか?一つのケースを紹介します。

最初の歩きに関して、ロルフィング前より終了後の方が、全体のつながりや流動性があるように見えます。

第1回目の施術前は座ってから立つ動作が本当に億劫になっていたが今はスッと立つことができる朝目覚めた際の体の痛みも少ない気づいたのは腎臓あたりがかなり冷える傾向にあった身体だが腎臓周辺の皮膚に体温が戻ってきている。

歩いても上半身が良い位置で下半身に乗っかっているなという印象。車内で歌ってみるとよく声が出る歌い手さんや身体をなりわいとした職業の方にはよりお勧めだと思った。(勿論全ての人に)というのも身体を固くさせない元々持っている身体の柔らかさを引き出すというのがこの施術の特筆すべき点だと勝手に思っている。そういえば猫の身体はいつでも柔らかいなぁとか子供の身体は柔らかいから自由な発想なのかとか歳を追うとなぜ人間の身体はこんなに固くなるのでしょうね。

聞くところロルフィング10後にもそれぞれに特化したロルフィングシリーズがあると言う。半年は経過を見つつ自分と身体との対話をする期間だそうで、意識的にならざるを得ない、身体は素直で正直だから。

素晴らしい体験を実感する事と同じことが田畑さんの施術にはあった。そうそうにないことである。きっかけ与える田畑さんは遥かに純度の高い思考と技術だが、これに答えたのは自分の身体で誰がどうではなくあぁ皆さんに感謝なんだなと素直に思えた。

10シリーズの詳細なレポート全文については以下から読むことができます。

http://rolfinger.com/Experiences/2019/12/02/cgデザイナ/

ロルファー串崎氏による田畑へのインタビュー(ニコヒロWSを終えて)

昨年のニコラさんとのコラボレーションワークショップを終えて、3ヶ月経過し、田畑が思うところをロルファー串崎さんにインタビュー頂きました。またまた、串崎昌彦さん、馬本久美さんにご協力頂きました。

さらに、足の重要性、そして守破離の後に続く、傳の概念について考察が続きます。

バイディジタル O-リングテスト診断におけるロルフィングの意義

酸化ストレスの使用となるマーカー物質、8-OHdGが、できるだけ低いレベルに抑えられていると、病気から遠い状態、つまり健康の質が高いといえるそうです。バイディジタルOリングテストの大村先生と下津浦先生によると、がんや心臓病、そして心臓病などの生活習慣病への「なりにくさ」はこの8-OHdGを測定することで評価できるとのことです。

今年4月に東京大学で開催される、国際バイディジタルOリングテスト学会で発表するお誘いを下津浦先生から受けて今準備中です。

過去にお二人の研究で、これをFoot Gravitation Center(足の重心センター)と呼ぶ足の甲のあるポイントがあって、そこに特定の刺激を与えると、様々な治療効果があるとご報告されています。その際、8-OHdGも低下するらしいです。ここを刺激するのは、身体の歪みを取って、重力への適応性を上げることにつながると考察されています。

なんと、それってロルフィングが目指してることと一致してますよね。

じゃあ、そこで気になるのは、ロルフィング前後で、8-OHdGは下がるのか?

通常の方法ですと、実際に尿や血液や唾液をサンプルとして、8-OHdGを測定しなきゃいけないわけですが、そこでBDORTを使うと、写真からそれを読み取れます。BDORTに馴染みのない方々には、??と思われると思いますが、その診断にはレベルがあって、下津浦先生だと最高クラスの7段で、もの凄い精度で測定することが可能です。

たくさんロルフィングのケーススタディの写真も残っているので、いくつかお送りして判定して頂きました。

すると予想通り、ほとんどの例でロルフィングのセッションは、8-OHdGのレベルを下げていました。12例中、少なくともレベルが上がった例は一つもありませんでした。

長く通われた方で、 -80まで下がった方もいました。+25〜 -100までの範囲で評価されます。-100に近い方がそれだけ病気から遠い位置にあると言えます。

受け手としての感想や写真での結果でセッションの成功を評価できなかったわけですが、こうした切口から、評価が可能だということは大きな意味をもちます。また、本人に改善の自覚が感じられないとしても、実際は意味を持つことを示せるかもしれません。

セッション受けて、なにが変わったのかわからなかった、という感想があったとしても、病気になりにくい状態に向かっていたとしたら、それは大きなことだと思います。逆にすごく贅沢な時間を過ごせた、いい気分になったけど、その時その日止まりで、8-OHdGも元通りなんてことも、起こっているかもしれない。

なにせ意識や自分の感覚で追えることには限界がありますから。私としては、長く通って頂いているクライアントの方々に対して、セッションに依存させているんじゃないか?とか、他の方法に目を向かわせないように囲っているんじゃないか、不安になることがあるんですが、この結果をみて、しっかりと生活習慣病からも遠ざけるサポートになっているのであれは、もっと喜んで前向きに提供しようと思った次第です。

欧州Rolf Movement教員ニコラ・カロフィーリオとの対談

昨年秋に行われた日欧講師共演ロルフムーブメントワークショップの合間に行われたニコラ・カロフィーリオと田畑の対談の模様です。通訳・翻訳は、古川智美さん、カメラ、馬本久美さん、動画編集を含むプロデューサーに串崎昌彦さんのご尽力を頂きました。

Nicola: 初めまして、ニコラと申します。南イタリアのバーリという暖かいところから来ました。 私は元々ダンサーで、25 年間ダンスをしてきました。最初は型の決まったバレエから始めて、その後はコメディやミュージカル、コンテンポラリーダンス、舞台な様々 な身体を使った表現を学びました。 私は身体を見つめていくためにソマティックな考えを学んできました。バレエから始まってマーシャルアーツ、フェルデンクライス、色々なことを探求していく中でロルフィングに出会いました。 

最初のロルフィング体験についての質問に対して:

ニコラ:私はダンスをしていたこともあり、外側に向かって忙しかった。ずっと外に向かって表現することがメインだったが10シリーズを受けたことで自分の内側を見るというプロセス、内側の探求に変わったことが一番の発見でした。この探求は今も続いている長い旅であります。今まで私は大きい舞台で大きいスペースを探求していたが動きだったり表現をする中で見えていなかったところや、身体の色々な小さいスペース、内側の小さなスペースが健忘症みたいになっていたところを探求するように変わっていきました。外側の広いスペースから自分の内側に新しい舞台を発見したような感じです。

10シリーズを受けた後、7.8年はダンスを続けていたのですが、ダンスは辞めてもっと内側の探求をする旅を始めました。ステージを卒業してから12年経ち、その間踊っていないんですが、またこの先いつか表現するところに戻ってきたいとは思っています。この12年間多くの気づき・学びがあったので、それらを持ってもう一度ダンス・舞台という形で表現できればと思っています。

田畑: 今回日本に来て、教えようと思った動機を教えて頂けま すか? 

Nicola: まずは今回、串崎さんがこのワークショップを実現してくれたことに非常に感謝しています。 私は昔から東洋にものすごく魅了されていました。太極拳や指圧、合気道なども少し勉強して、東洋の伝統文化 という何千年も蓄積してきた重力との関係性に興味が ありました。私は、バレエ・ダンスなどの西洋的な伝統 の中に生きている人間ですが、東洋的なものから学ぶこ とが非常に多くあると感じていました。 

私はマーシャルアーツ・指圧・合気道などの経験を通して、

「重力とは静けさで満たされた空間である。」

と思っていました。 そういった背景で田畑さんの記事を読み、大変自分に響きました。ぜひ田畑さんにお会いしたいと思っていたところに串崎さんが私のワークショップを受けに来てくれ、「ニコラのやっていることは田畑さんのやっている ことに似ていて共通点があるので、ぜひ日本に来て教え てくれないか?」と声をかけてくれました。天にも昇るような気持ちでしたよ。 身体はただ単に筋肉や臓器などで構成されているのではなく、文化や歴史に影響されているので、我々西洋人 が東洋から学ぶことは非常に多いと思います。 今までは外から東洋を観ていましたが、日本に着いてから今日まで色々な物を見たり触れたりする機会があり、 刺激に満ち溢れています。例えば、料理人がどうやって調理しているか、どういう風に料理が出されるか、ということも含めてです。 

今、東京で自分が見ていることから言えるのは、

「日本には空間を尊重しているなぁ。」と感じる在り方がたくさんあるということです。それは自分自身にとって非常に大切なことです。今回前半のワークショップのタイトルは「東洋と西洋を Em-body する」で、西洋的な空間の扱い方、重力・スペース・静けさをどういう風に見ているか、東洋ではどういう風に見ているか、両方の視点から見ていくことに よってロルファーはたくさんのことを学べると思います。 

田畑: 今日までの4日間のクラスで、ニコラさんのデモストレーションを拝見する機会がありました。すべてが静けさの中にあって、動きの 一つ一つにEm-bodyを感じました。 それは一般的なエクサイズとは対極にあって、かといって自動運動に任せて原初的な動きをするということとも異なるクオリティで、洗練された動きの中にしっかりとEm-body があり、本当に素晴らしいとしか言いようありません。そういうものはどこから培われたのか、またそのことに関して何か役立ったトレーニングなどがあれば、シェアして頂けますか? 

Nicola:どこから来ているかという問いの答えは、1つは私が芸術的なダンサーという職業だったからです。コンテンポラリーダンスのような身体表現で振付師がキーワードを出す際に、水のような液体的な 流動性のある動きを求められた時、氷になったり水になったり気体になったりするのはどういうことなんだろうという探求を、ダンスのバックグラウンドでしていました。振付師が出すキーワードの動きのクオリティを自分の中でどういうことなのか体現化していく過程が、とてもクリエイティヴなプロセスだったのです。 

それから、ロルフィングの教育を受けて、胎生学や幼年期の発達について学んだことも役立っています。 赤ちゃんが世界を発見し始めるプロセスも創造性に満ちたものです。が、大人になっていく過程や、学校に行 き始めて「はい、静かに座って」と言われたり勉強したりすることを求められる中で、失われてしまうものもあります。でも1つの細胞が 9 ヶ月かけて胎児に育っていくこともすごいプロセスで、子供が生まれてから立ち上がるまでのプロセスも、解剖学を分かっているわけでも、 自分の手足を認識しているわけでもなく、周りの大人と 同じことをやりたいという想いから、どんどん動きを獲得していきます。失敗してもいい環境と、ああなりたいという想いで習得していく過程は、とても喜びに満ちた クリエイティヴなものです。私はこの発達段階にとても可能性を感じています。でもそのような喜びや学び方を、 私たちは大人になると忘れてしまいます。身体の在り方や発達の仕方をカゴの中に閉じ込めて、忘れてしまって いる部分があるように見えます。 

大人の身体が忘れてしまった子供時代の性質を、教育の中に入れたいと思っています。子供が発達していく段階は魔法のようでもあり、サイエンスで説明できる部分も あり、でもすごく神秘的でもあります。 最初はそれをロルファーではなく一般的な人たちへ、子 供の在り方や学び方の喜びに満ちた部分を使って教えていました。のちにロルファー向けのクラスにも展開していきました。 子供が発達していく段階では、『分からなくても OK ! 』、『失敗しても大丈夫!』が前提にあるけれど、大人になるといつの間にか忘れてしまい、『失敗したくない』とか『分かっていないと…』とかがありますよね。『全部大丈夫 ! 』という環境を用意することで、安心安全な学びの場になります。失敗したり、分からないままやった りすることが学びの一部になります。それを大切にしています。子供の学び方は芸術的です。 

田畑さんのワークは「The Art of Yield」と言われていますが、ロルフィングも重力を通したコミュニケーション で アート だと思っています。 

田畑: ワークされている時は、かつて自分たちが子供だった時の無限に開かれていた可能性にフォーカスして、常にワークされているのでしょうか? 

それが、セッションの時の場を作って、安全な空間にもなり、その場がクライア ントをすごくサポートしているような気がします。 私も実際クラスでご一緒させて頂いて、ニコラさんがデモをすると、こちらもインスパイアされてインスピレーションが湧いてくるし、自分がそのインスパイアを実行することによって、どんどん可能性が広がってゆく、という循環が生まれている感じがして、すごく楽しいです。 

Nicola: それはもちろん私も同じです。同じようにインスピレ ーションを受けて、その流れを感じています。 

田畑: もし、個人セッション時に持つイメージや感覚、知覚状態、意識していること、何を大切にしてワークしているかなどがあれば、シェアして頂けますか? 

Nicola: 日本に来て皆さんと一緒に仕事をするまではっきり言葉に表せませんでしたが、日本に来たことで明確になりました。自分がセッションをするときに大事にしている のは、クライアントにとって安心・安全をどれだけ作り出せるか、です。自分自身である状態でワークできるよう準備をして、そのために毎日瞑想したり自分の内側を感じたりするようにしています。 

私は自分自身であること、自分と共にロルフィングして いる状態を大事にしていて、自分が重力と共にあるの忘 れずにいると、大脳皮質レベルではない自分の内側からクライアントと接することができると感じています。 それによりクライアントが安心・安全を感じられること で、クライアント側から自ずと立ち上がってくるものが 現れて、「ここに触れてほしいんだな」とか「こういう 問題があるんだな」とか、自分が yielding していること でクライアントから出てくるものを受け入れるのを大切にしています。 

 今日クラスで田畑さんがデモで行ったボディリーディングをする時の在り方と同じように、ただ単にボディリーディングから介入という流れではなく、ボディリーディングから既に介入が始まっている。ボディリーディングの時点から既にクライアントとの関係や変化が起きていますよね。クラスの中で行ったエクササイズで「気配を感じる」・「スペースで振動が起きている」といった、身体と身体、クライアントと出会うことから、すごく繊細なことが生じています。

今回日本に来て、私がワークしている際はやはり安心・ 安全なスペース作りを大切にしていることが明確にな りました。 それは子供も同じで、お父さんお母さんが傍にいると分 かっていると安心・リラックスして遊ぶことができますよね。子供が安心した状況にいられると、身体が自分か ら表現してくる。犬や動物も同じで、大好きな人が傍にいてくれたらリラックスし、寄りかかってきて、「ここ 撫で撫でしてよ」と身体が表現してきますよね。 人間も動物と同じで、そういった性質を持っています。 安心できる時間と空間をクライアントに用意してあげ ることで、10 シリーズの中のどこかのタイミングで、 クライアントの身体が「ここはもう少し繋がりが要るよ」 とか「ここがもう一度思い出したい場所」など表現して くるようになります。 

田畑: ポリヴェーガル理論(※)では、安全(を感じること) が強調されてはいますが私自身は embody されたうえでの、安全ということが大事になると思っています。 色々な段階の安全がありますが、それが本当に embody されるとしたら、しっかり重力に対してどれだけ誘導されているかどうかが鍵になっていると思うので、この辺りのことはもう少し強調されてもいいのかなと考えて います。 

※田畑さんからの補足:ポリヴェーガル理論では、安全であると感じることは生理学的な状態に依存していて、安全であるという合図は自律神経を穏やかにすると論じています。それを促すものとして、社会的交流の重要性が強調されています。一方、今回のクラスで得られた感覚は、上記理論とは別の観点で、安全・安心の感覚を深める可能性があると感じました。

Nicola: この3日間で思い出したことがあります。ある人の詩の引用で、“静けさというのは重力の音である”という一節です。 静けさには色々な静けさがあって、月と地球では重力の 程度が異なるので月の静けさと地球の静けさは全く別のもので、地球の方がもしかしたら同じ静けさでも音が大きいかもしれない。 安心を感じるというのは、自分がどれだけの静けさを持 つことができるか ? だと思っています。それは、例えば言葉と言葉の「間」であったりします。一つの音が終わ り新しい音が始まる「間」に新しい知覚が開いてきたり する。何が歌・音楽を作っているかというと、実は音階ではなくその「間」によってできているのです。 日常の色々な忙しい動きやノイズから、クライアントに どれだけ静けさを提供できるか、が安心なスペースを作 ることに繋がると思います。それにより色々開いてくる ことで、そこにアクセスできる。 身体に緊張があるということもノイズだと思っていて、 そこにどれだけスペースをもたらすことができるか? そこにロルファーがどれだけ静けさをもたらすことが できるか?それはただ単に話さないということではなくて、会話の「間」を作ることで生じる静けさがクライアントの「間」を感じさせたり、静けさ・スペースが増えていくことで、関節や組織にスペースができたりする と思います。 

田畑: 重力の音、という表現は印象的でした。 重力の音が「静けさ」に繋がるとしたら、そこにロルファーはチューニングするといいのではないかと感じま した。 その「静けさ」はクレニオセイクラル・バイオダイナミクスでいうところのスティルネスとも違うと思うし、別のクオリティーを持つ「静けさ」で、そこにフォーカスすれば相互に安心・安全というものが得られ、結果的に クライアントに安全な場を提供できて必要なプロセス を起こすことを誘うことができるのかなという気がし ました。 

ではそろそろ最後になりますが、今後のニコラさんの活動予定、日本のロルファー、ヨーロッパ以外のロルファーに何かメッセージがあればよろしくお願いします。

Nicola: 今後のプランについては、すごく自分の中にあってカオスになっているので、秩序立てないといけないと思っ ています。 

ロルファーへのメッセージとしては、「究極的にロルフィングはロルファーのものである」というアイダ・ロルフからの引用です。この言葉を見た時に、自分の中でロルフィングに対する理解がガラッと変わりました。それまで、ロルフィングはクライアントに触れて何かするものだと思っていましたが、そこだけ見ていても、自分が自分でいるということを軽視してクライアントの身体だけ見ていても、安心安全ではない。でも、このアイダ・ロルフの言葉に触れたことは、私にとても広い世界を開いてくれました。何かをするのではなく、自分が自分である努力が非常に大事で、ロルフィングというのは自分自身の変容のプロセスでもある。自分が自分でいられるために、私は毎朝瞑想など静かな時間をとるようにしています。それによって、色々なことに秩序をもたらせるための準備や時間をとっています。ロルフィングが自分の変容のプロセスだという気づきは、自分の人生・出会い・すべてのことが成長や発展に繋がっていくと思います。

今回皆さんと一緒に仕事をすることで日本から多くを 学んだので、これからももっと一緒に学び、育っていきたいです。 例えば、「間」に“スペース”だけでなく“静けさ”という 意味があることや、日本での空間の扱い方などは、クライアントにロルフィングを施す前に準備すべきこととして大切だと思うので、こういったことをこれから更に探求していきたいと思っています。 

田畑: ありがとうございました。 

「空間身体学」 宣言

人生の中で、何かを宣言する機会ってほとんどないと思いますが、先日のVACANTでのイベントを、空間身体学という学問を提唱する日にしましょう、という片山洋次郎先生の御提案頂きました。敬愛する先生と一緒に宣言するのは誠に光栄です。 

身体を理解する上で、既存の概念には収まらないので、新しい学とすることで、様々な分野からの賛同を得たいと思います。

そこで、片山先生との間でとりまとめた「空間身体学」骨子です。

空間身体学:

・空間に対して広がりを持つ存在として身体を捉え、その在り方を研究する

・身体は空間から孤立した存在ではない

・身体のバランスは、外部環境との絶え間ない相互作用によって成り立つ

・それらの関係性の中で身体を動的な存在と捉え、身体とは何かを動的感覚による  実践的体験を元に探求する。

“ロルフィング・整体ばかりでなく、多様なボディワーク、瞑想、ヨーガや、武術、ダンスなどの領域で、身体を空間への連続体と感じている人たちとともに、身体と空間をつなぐ”学”を起こしていきたいと思います。さらには景観や建築やモノと身体のつながりをも探求していけると面白いことになりそうです。” (片山先生談)

どんな展開になるのか、来年から楽しみです。

2019年原宿VACANTでのイベントと共に  – Vol.2

vol.2「ロルフィング x 身がまま整体 ~心地よいカラダで年を越そう!~」
片山洋次郎 × 田畑浩良

2019.12.26 Thu

OPEN 19:00 / START 19:30
at VACANT/2F

定員:各回20名

vol.2のゲストは、身がまま整体『気響会』を主宰されている片山洋次郎さんです。片山さんが創り上げられた独自の整体法は高い評価を受けており、施術のみならず、多くの著作を通じて、身も心も気持ちよく生きる知恵を広められています。

今回は「心地よい身体で年を越す」をテーマに、何度もコラボレーションを重ねられているお二人の指導のもと、ご自身のカラダを労っていただきます。

原宿Vacantの大切な時期にこのような機会を頂き、とても光栄に感じています。
元々ロルファー仲間の楠美奈生さんが、こちらの素敵な空間で、身体についてのディープなワークショップを定期的に開催されていることは伺っていました。その楠美さんを通じてお声かけ頂いた時に、すぐ頭に浮かんだのがお二人とのコラボレーションです。

片山洋次郎先生とは、十数年前から、交換セッションやワークショップを通じて、共鳴や間合いなどについて探求を深めさせて頂いています。先生と共に、身体の声を無視した矯正的または固定的介入とは異なる、”動的な感覚”を重視する「空間身体学」を提唱しようとしているところです。それは、施術者の知覚状態 – 在り方を大切にしていて、触れることに囚われず、空間と身体との関係性を重視しています。参加者同士の交換ワークを通して、いい間合いと楽な呼吸、共鳴し合う、”心地いい”身体を体感して頂ければと思います。

片山先生の佇まいはいつ拝見してもすばらしいです。
レジェンドのデモのワーク。

空間に対する身体感覚を上げるウォーミングアップをしてからの、片山先生の仙骨を通しての背面への働きかけの様子。シンプルなタッチで、みるみる身体がゆるんでいくのが、わかりました。

田畑のデモのワーク。

デモの合間に、片山先生の身体はどのように共鳴しているのか、フィードバックをもらいながら、ワークを進めた。肝臓・胃の声を聞いてみた。

参加生同士ペアを組んで実習。

広いVACANTの空間を贅沢に使っての、交換ワーク。待って、しっかり聴いてやることで、身体は自ずと変化を始める。ただ、どの音を聴こうとしているかが、ポイントだったりするね。

最後のQ and Aの様子。
レジェンドとの記念撮影。

空間との親和性が増せば、自ずと身体は調整を開始することを参加者の方々と共有できたのではないかと思います。

このワークショップが始まる前に何をどうするか、かなり白紙でしたが、その場の空間がすることを誘ってくれた。片山先生の誘導の後、肝臓と胃の音、振動を聴いてみる感覚で触れる。すると各臓器も聞き手がいることを認識して、反応を始める。安全・安心の場の中で。

片山先生の直感からの曲リクエスト、Water is wideを皆で聴きながら、エンディング。来年にはもうこの会場はなくなってしまうけれども、参加してくれた人達のカラダを通して、ここで共有したことがずっと響き続けるような気がしました。

さよなら、VACANT、ありがとう!

担当の吉田さん、声をかけてくれたロルファーの楠美さんにも感謝!

2019年のいい締めくくりができました。

2019年原宿VACANTでのイベントと共に – Vol.1

Workshop:

特別なカラダの時間
 

vol.1「オトとカラダと ~耳をすますと起こる変化~」

山崎阿弥 × 田畑浩良

2019.12.4 Wed
OPEN 19:00 / START 19:30

というスケジュールで今年いっぱいで幕を閉じる原宿VACANTにてワークショップしました。

山崎阿弥さんとは、初のコラボレーションです。パフォーマンスを拝見して、私の中の「声」というものに対する認識がガラッと変わりました。山崎さんの音に対する捉え方と声の響かせ方は非常にユニークで、声楽のみならず、身体技法にとっても参考にすべきヒントが詰まっています。そのあたりを伺いながら、いい間合いとなるような場を整えながら、音や振動を介して、身体の感覚がどのように変化するのか、参加者のみなさんと実験を通して、体験したいと思います。

サウンドの持つ力は、マントラやチャントによっても意味があるとはわかっていても、どれほどか?どのくらい可能性があるのか?よく把握できてません。ソマティック・エクスペリエンスというトラウマ療法でWuuという響きを使うことはありますが、それがうまくはまるときもあるし、そうでないときもある。音は、振動であり、細かい動きでもあります。だから、それをうまく使うことができれば、身体の調整に役立つことは間違いないだろうな、というところまでは想像がつきます。

山崎さんとのやり取りでその辺りがもっと掘り下げられるような気がしたので、コラボを依頼した次第です。

山崎さんの声を聴く
部屋の空間における居心地いい場所をみつけるソマティックベースのコンステレーションのワーク。
骨間膜の音を聴くデモンストレーション。
整ったカラダに山崎さんの声を響かせる。
クラスを終えてほっとする。
妻と舞台俳優の方も参加してくれました。

予想通り、空間に親和性が増して、整ったところに、音が響くことで、体調がよくなった方が続出。大いなる実験は大成功でした。

雑誌ソトコトの記事完全版

校了と思いきや、レイアウトしてみたら文字数が多いので削ってほしいという直前の依頼があって、多少削られる経緯がありましたが、第一次編集バージョンが以下の通りです。

日欧講師共演ロルフムーブメントワークショップ

欧州ロルフィング協会講師ニコラ・カロフィーリオを迎えて

昨年末、欧州トレーニングを修了したロルファーの串崎昌彦さんから、ニコラという欧州ロルフィング協会の講師が、私と一緒に日本でクラスを教えたいと希望しているが、どうでしょうか?という打診のメールが来た。サーフィンを愛し、世界各地のマニアックな波を追い求め、怪我をも厭わず旅を続けてきた彼が、自分と組み合わせたい人物がいるという。急ではあったが、何かいい流れの予感を感じ、二つ返事でOKした。串崎さんによると、ニコラは以前より私がロルフ・インスティテュートの機関誌で報告してきた間とイールドを用いた技法に共感し、とても興味を持っているらしく、 自身の探求のためにも共演を楽しみに来日を待ち望んでいるとのことだった。

会ったこともない相手と共演するのは、かなりチャレンジなことだが、ここは串崎さんの勘を信頼することにした。

近年、欧州講師フベア・ゴダールが知覚を使った独自の理論を導入することでさらに発展を遂げたロルフムーブメント™。筆者は「間」や「肚」の概念を導入したが、フベアの流れを汲むニコラの目に私のワークは、どう映るだろうか?

今回、報酬基準の高い欧州講師の来日とあって、受講料が比較的高めに設定されたにも関わらず、ほぼ満席となり、この講座へ関心の高さが示された。

「東洋と西洋の体現」

6日間のクラスを通して、施術・セッションにおいて最も基礎となる、安全・安心な「場」をどうやって創りだすことができるかについてが大きなテーマとなった。そして、キーワードはエンボディメント (体現)。朝はニコラの誘導で、ムーブメント瞑想からはじまり、会場の柱や畳に一つ一つ手で触れることによって、今この空間にいることを実感し、会場に次第に親しみを感じ、安心できる空間へと捉え方が変わっていく。ニコラの一つ一つの振る舞いから、日本文化に対するリスペクトを感じた。

ニコラはイタリアのバーリで生まれ、ダンサーそして振付師として長年ドイツなどで活動。母国語に加え、英語、ドイツ語やフランス語も話し、ラテン語にも造詣が深い。言葉の語源や音の響きからもその意味を背景ごと伝えようとする。ニコラの声の響き、言葉と言葉の間の取り方、一つ一つの動きの精妙さ、そのすべてに「静けさ」が存在した。時折見せるダイナミックな動きをしても、それまでの流れや場を乱すことはない。きっとそれは、彼のダンサーとしての経験が関係しているに違いない。そして、講師の伝えたいことや流れを尊重し、余計な解釈を足さず、かといって大切なことを省かず「そのまま」伝えてくれるロルファーの古川智美さんの通訳は絶妙だった。

ニコラの胎生学的観点からの腕についてのレクチャー。

クラスは、例えるとフリースタイルのラップのように相手のデモを受けて、次どんなデモをするか決めていく流れとなった。そのデモは、大半が普段試したことのないワークだった。3日目の終わりには、感極まったニコラの目から涙がこぼれた。

「究極的にロルフィングはロルファーのためのもの」

後半のクラスは、ロルフ博士が残した「重力がセラピストである」という言葉を体現するための探求で、前半の内容をさらにマッサージテーブル上での実践に応用するための内容となった。デモから生徒同士の交換セッション→体験のシェア→田畑のデモ→→というサイクルがどんどん回り続ける。ニコラは、重力の音としての「静けさ」を、私は居心地よくあるための相互主観的な「間」を深めた上でデモを提示していく。教える側にライブ感と、実際はどうなるかわからない反応にオープンでありつつも、実験的な緊張感があった。デモによってインスパイアされ、それを参考に実習し、その体験を全体でシェアすることで理解が立体的に深まり、頭の理解を越えた身体全体にエンボディされる。ワークを重ねるごとに個々の静けさが深まり、重力のみならず空間との親和性がどんどん高まっていくドープな体験となった。

田畑氏のデモンストレーション。胸郭や喉に働きかける前の全体に委ねる動きと感覚を引き出しているところ。
腕へのワークのデモ。橈骨と尺骨に新しい動きをインプットする。

オランダから参加してくれたコスタスさんは、このクラスの終わりに、私達講師同士が互いにインスパイアされ影響し合う姿をみて、ギリシャ人らしくアリストテレスの言葉を引用しながら、

「古代ギリシャにおいて最高位の価値があると考えられていた理想の一つは、気のいい同じ価値観を共有する友人関係で、それを二人のやりとりの中に見ることができた。これからもその関係を続けてほしい。」という賛辞に満ちたフィードバックをくれた。

このクラスで扱われた内容は、テクニック以前の施術者としての在り方や意識の向け方について、そして、創造的なセッションを目指す施術者にとって参考になったに違いない。

会場、講師、通訳などほとんどの設定をコーディネイトしてくれた串崎昌彦さん、そしてそこに賛同してくれた参加生の方々には感謝の言葉しかない。

欧州から3名の参加があり、ロルファー以外にヨガ、ジャイロトニック講師、ダンサー、ロルファー志望生を含む多様性に富む構成となった。

クラス後数ヶ月が経過した現在も、余韻が残っている。音の波が、減衰することはあっても消えることはないように、あのクラス全体で共に響き合った振動は、ずっと身体とその周りで響き続けているようだ。

この記事を執筆中にブラジルのムーブメント講師モニカ・カスパリ先生の訃報が入った。まだまだ現役で活躍されると信じていただけに、残念でならない。自分達がワークできる時間には限りがあることを肝に銘じつつ、偉大なムーブメント講師だった先生のご冥福をお祈りします。

ニコラ・カロフィーリオ

 イタリア、ドイツでダンスを学び、約20年以上に渡りダンサー、 振付師として 活躍。指圧を通じて身体の理解を深め、心身の探求を始める。 その後、Rolfing® 、 Gyrotonic Expansion System®を学ぶ。生地イタリアを拠点とし、現在欧州ロルフィング協会 (ERA)で、Rolf Movement®講師として活動。数多くのRolfingトレーニングをアシストし、他の講師及び生徒からも絶大な人気を誇り、新進気鋭の逸材と評判も高い。www.thinkingbody.it 

田畑浩良

( 株 ) 林原生物化学研究所の研究員を経て、1998年米国コロラド州ボールダーのRolf Instituteによってロルファーとして認定される。動的感覚を伴った繊細な介在としてのRolfing®をデザインし、個人セッション提供を中心に活動。2009年には、Rolf InstituteのRolf Movement®講師として任命され、細胞生化学的視点と日本固有の概念である肚、間を統合したRolf Movement認定プログラムを国内外で提供中。www.rolfinger.com

 ※ロルフィング®、ロルファー™、ロルフ・ムー ブメント™、Rolf Instituteは、Dr. Ida Rolf Institute of Structural Integrationの商標であり、米国以外に日本を含む他の国々で登録されています。日本で活動しているロルファー及びロルフムーブメントプラクティショナーは、日本ロルフィング 協会の公式サイト(rolfing.or.jp)から検索できます。 

このクラス修了をもって必要30日単位取得を満たした串崎昌彦さん(写真中央)は、めでたくロルフムーブメント™プラクティショナーとして認定された。今後の活躍を期待しています。

後日談

このクラスはかなりのインパクトがあったようで、このクラスの参加によって、ロルファーに具体的になろうと決心した方が少なくとも3人いるという。さらに敏腕オーガナイザーの串崎氏によって、後半申込みがぐっと上がって、日本ロルフィング協会に残すお金もかなり残ったとのこと。計画当初、ニコラなんて知らないし、人なんてどうせ集まらないから無理じゃね?という雰囲気もあったようだが、そんな風もどこか遠くにぶっ飛んだawesomeなイベントだった。結果的に、しっかり黒字という成果も残しての完結、串崎さん、完璧、気持ちがいいです。

三叉神経(第五脳神経)への刺激による統合

1.三叉神経とは?

国語辞典:脳神経の中で最も太いもの。橋(きよう)の手前にある三叉神経節から出て,末梢に向かう方の突起が眼神経・上顎神経・下顎神経の三枝に分かれる。頭部および顔面の大部分の感覚と咀嚼(そしやく)運動を支配。第五脳神経。

2. ワークによる可能性

顔面麻痺とは、正しい表現ではなく、三叉神経麻痺が正しいとされるが、この神経伝達に何か滞りがあると、鼓膜、顔面の皮膚の感覚、表情筋や舌を含む咽頭、鼻粘膜の感受性に主に関与している。プロプリオセプションにも深く関わっていて、痛み或いは快の感覚を認識して、第3、4,12神経ともつながりがある。したがって、平衡感覚だけでなく、聴覚、音を介しての空間認識、咀嚼、嚥下の機能回復につながる可能性がある。また、顔の表情筋への影響を介して、腹側迷走神経系への活性化につながる可能性もある。

3. Tuning Fork (音叉)による刺激

神経学者らの研究によって、特定の周波数64Hzが三叉神経に刺激を与えることがわかっている。Tuning Forkという音叉を用いて、その周波数を振動として神経に刺激を与えることができる。タッチも物理刺激であり、ある周期を持つ波としての刺激となる。物理刺激をうまく使えば、滞りのある場所に効果的に動きをもたらすことができる。

4.実際のワーク

筆者は、Tuning Forkを入手し、Rolfingのワークに取り入れてみた。Tuning Forkを、頭蓋の動きの小さな制限領域に当てる。すると、より、振動が行き届くようになるまで、様々な場所からTitrationしながら、働きかける。結果的に、声の共鳴が高まり、首の可動性が向上し、空間認識にも違いがでてくることが多くのケースで観察された。

5.今後について

声楽は声を出すこと以上に、自分が出したサウンドを正確に聴くことができるかという能力にも依存している。さらに、頭蓋、咽頭全体に音が響くということが、身体を楽器とする声楽のパフォーマンスを左右する。サウンドのワークとして、声に関わるパフォーマンスの向上及び、嚥下や顔面麻痺といった生活の質に深く関わる神経だけに、それらに障害のある方の回復の手助けになればと思う。

ラーニングプロセスとしての守・破・離・傳

熟練の段階には、三つの守・破・離があることはよく知られている。型を忠実に守る段階から、それを独自に改変する段階、そして、型を自在に操り、型から離れる段階へと進むことが、自然な熟練の流れであるとされている。

その先人の深い洞察と普遍性に敬意を示しつつも、私なりの解釈では、それは当人の中での完結であって、循環する流れとして考えると、もう一つ足りないような気がしていた。どんな達人でも個人で帰結してしまうのではなく、大抵の場合、後に続く人々に伝承するというプロセスを通して、その手法なり芸術・芸能が保存されつつ、深化・進化していく。

つまり、全体をつないでいくための、「伝」が存在し、離に達した段階の先達が、原点に戻り、型にあるエッセンスを捉えながら、独自の解釈でその技法を教え伝えることで、先達もまた深くその技法を学ぶことができる。

実際に、「教うるは学ぶの半(なか)ば」:人に教え理解させることは,半分は自分にとっての勉強でもある、という言葉もある。どの段階であっても教えることは人を成長させる。

一旦、守から離れたことで、その技法に深みと立体的な解釈を背景を盛り込みながら、守から出発する後進に教えることができる。

「教」でもいいかもしれないが、教えるだと一方的で上下が意識されるので、ここは対等な学びということで、伝の方が相応しいかもしれない。

とすると、伝・・・傳、これはロルファー串崎昌彦氏がすでに屋号に用いていた漢字ではないか!? Rolfing傳、やられた! 

守・破・離・傳

敢えて、傳を持ち出したのは、守・傳→破→傳というように離に至る前にも傳を行うことが熟練を深めることにつながるからである。巷を眺めると、中途半端な段階で、独自の理論を展開して、新しい手法の名称をつけて、商売を展開するというのはよく目にする。企画力やプレゼン力が伴っていれば、集客もうまくいくだろう。

しかし、ここで曲がりなりにも、サイエンスに関わってきた人間としては、独自の名前をつけてもいいのだでれど、後から学ぶ人がより深く学ぶための情報をしっかり伝えることを怠けたり、意図的に隠していないか?ということにどうしても注意がいく。

オリジナルはクセも強いし理解が難しかったりする。だが、本気で深く学びたいという人間にとっては、希釈されたあたりのいい情報より、できるだけ元ネタに遡る方が、より本質に迫ることができる。だから、独自の理論を展開するのは自由だが、さもそれを最初から創造したような態度は如何なモノかと思ってしまう。他人のした仕事には敬意をもってきちんと引用しつつ、後継が深く学ぶための土壌を正直に提供するのか?それとも自分を越えないためにコアとなる元ネタを隠して、オリジナリティを装うのか?そこには、その講師の倫理感や人間性、何のためにその仕事をしているのか?ということが直結している。